世界の精神保健―精神障害、行動障害への新しい理解

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  • サイズ A5判/ページ数 219p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784750320182
  • NDC分類 493.79
  • Cコード C0036

出版社内容情報

世界各国の精神保健に関する歴史的変遷、現状と課題を医療面だけでなく差別問題などの社会的な面からも明らかにし、さらに新しい理解とこれからの展望を示そうとする、WHO(世界保健機関)によるレポートの待望の日本語訳。

概観
 行動のための三つのシナリオ
 報告書の概要
第1章 精神保健への公共保健アプローチ
 はじめに
 精神保健を理解すること
  神経科学における進歩/行動医学における進歩/生理学的な経路/保健行動の経路
 精神障害および行動障害を理解すること
  生物学的要因/心理的要因/社会的要因
 統合された公共保健アプローチ
第2章 精神障害および行動障害がもたらす負担
 障害を同定(認定)すること
 障害を診断すること
 障害の有病率
  プライマリーヘルスケアの場にみられる障害
 障害の影響
  社会にとっての経済的費用/生活の質に対する影響
 いくつかのよくみられる障害
  抑うつ障害/精神作用物質使用障害/統合失調症/てんかん/アルツハイマー病/精神遅滞/児童期と青年期の障害
 併存症
 自殺
 精神障害および行動障害の決定要因
  貧困/性/年齢/葛藤と災害/主要な身体的疾患/家族と環境要因
第3章 精神保健問題の解決
 パラダイムの転換
 ケアの原則
  診断と介入/ケアの継続性/広範囲のサービス/患者と家族との協力/地域社会の関与/プライマリーヘルを関与させること
  労働と雇用/商業と経済/教育/住居/その他の社会福祉サービス/刑事裁判制度
 研究を促進すること
  疫学的研究/治療、予防、研究成果の促進/政策およびサービス研究/経済的研究/開発途上国における研究と異文化間比較
第5章 今後の方向性
 効果的な解決策の提供
 全般的な勧告
 資源の実態に基づく行動

事務局長からのメッセージ
 精神病というものは、個人的な不首尾といったようなものではありません。自分以外の他の人にだけ起こるもの、というわけにはいかないものなのです。さて、私たちががんについて率直に話すことができなかったのは、そう昔の話ではない、ということを思い起こしましょう。がんというものは家族にとっての秘密事項でした。現在、私たちの多くは、エイズに関して語りたがらないでいます。しかし、こうした障壁はしだいしだいに打破されてきています。
 2001年世界保健デーのテーマは「排除をやめよう――ケアに取り組もう」でありました。そのメッセージは、精神病をもつ人びとや脳障害をもつ人びとを私たちの地域社会――そこはすべての人にとっての居場所であります――からの排除を正当とする理由など存在しない、ということでありました。しかし、いまだ多くの方がたが、こうした個々人を避けようとしたり、こうした個々人を知らないふりをし続けています――まるで私たちが理解したりケアしたりする気がないみたいにです。この報告書のテーマは「精神保健――新しい理解、新しい希望」です。それは、どのようにして科学や感受性が精神保健におけるケアや治療へ再び新しく強調するものと信じています。これら諸原則の第一は、精神病を理由とする差別があってはならないということで、第二は、可能なかぎり、すべての患者が地域社会で治療を受け、ケアされるべきであるということです。第三は、すべての患者はもっとも制約の少ない環境内で、もっとも制約の少ない、もしくは押しつけがましさができるだけ少ない治療を受ける権利をもつべきであるということであります。
 本年、加盟各国は私たちの努力を、医学的であれ、社会的であれ、政治的であれ、精神保健のさまざまな側面に焦点化することに向けてきました。本年、WHOはまた、うつ病のマネージメント、自殺予防、統合失調症、てんかんに関する世界的キャンペーンを開発し、着手することを支持しています。2001年の世界保健総会は、精神保健のあらゆる次元について討議を行いました。WHOでの、また、より大きな保健専門職の社会における私たちにとって、この強調された持続的な焦点化は一つの機会であり、また挑戦でもあるのです。
 なされなければならない多くのことが残されています。私たちは、どれだけ多くの人びとが、彼らが必要としている支援――利用可能な支援、多額の費用を支払わしているのです。
 このように、精神障害とまったく関係のない家族はむしろまれなのです。
 およそ1000人に1人が人生のある段階で精神障害のために苦しんでいるのです。アルツハイマー病を含め、なんらかの障害のリスクは年齢とともに増大します。世界の高齢人口にとって結論は明白です。精神病の社会的・経済的負担は莫大なものであります。
 今日、精神的であれ身体的であれ、ほとんどの疾病は生物学的・心理的・社会的要因の結合によって影響を受けています。精神保健と身体的な健康間の関係についての理解は急速に増加しつつあります。私たちは、精神障害は多くの要因の所産であり、脳内に物理的基礎をもっていることを知っています。それらはすべての人、あらゆるところに影響を与えているのです。また私たちには、かなりな程度にまで、それらが効果的に治療されうることもわかっています。
 この報告書は、うつ障害、統合失調症、精神遅滞、児童期・青年期の障害、薬物・アルコール依存症、アルツハイマー病およびてんかんについて扱っています。これらすべてがかなりよくみられる疾病であり、ふつう、重いディスアビリティを引き起こします。てんかんは(神経学的な問題でィグマが科学や理性を支配することを許す最後の世代になることを保証するための、一つの、また唯一のオプションをもっているのです。

2001年10月、ジュネーブにて
グロ・ハーレム・ブルントラント

目次

第1章 精神保健への公共保健アプローチ(精神保健を理解すること;精神障害および行動障害を理解すること ほか)
第2章 精神障害および行動障害がもたらす負担(障害を同定(認定)すること
障害を診断すること ほか)
第3章 精神保健問題の解決(パラダイムの転換;ケアの原則 ほか)
第4章 精神保健政策とサービス提供(政策を開発すること;サービスの提供 ほか)
第5章 今後の方向性(効果的な解決策の提供;全般的な勧告 ほか)

著者等紹介

中野善達[ナカノヨシタツ]
1934年、東京都生まれ。広島大学教授、大阪教育大学教授をへて筑波大学教授を定年退官後、現在は佐野短期大学特任教授を務める
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