出版社内容情報
首相就任以来、靖国神社参拝を続ける小泉首相に対する違憲訴訟で、憲法違反であるとの明確な判断を下した判決を勝ち取った九州・山口訴訟の提訴から実質審理、判決までの経過を記録する。訴状、判決文を収録。
「違憲判決」が終わってみれば
序章
1 現職首相の民事「敗訴」は初めて? 2 違憲性の判断は司法の責務
第1章 小泉首相の靖国参拝と訴訟の経過
1 総裁選で靖国神社参拝を明言 2 再び「英霊」を作らせない!
3 第一回に五人が意見陳述 4 報道されるため一時間以上待つ
5 仏教徒は不殺生・兵戈無用 6 近隣諸国から猛反発
7 帰国できなかった在日コリアン 8 キリスト者の転機は戦責告白
第2章 原告の陳述書と証言
1 『神さま さようなら』を出版 2 遺族原告の苦悩と自覚
3 五原告の本人尋問が六時間 4 一般市民は平和的生存権訴え
5 纐纈教授がバッチリ証言 6 仏教徒は「神祇不拝」を説く
7 「戦責告白」に生きるキリスト教徒
第3章 「実質勝訴」判決
1 四十数年の「伝統と文化」 2 百ページの最終準備書面
3 そして「実質勝訴」判決 4 勝利判決報告集会
5 「福岡判決」を活かす会へ
資料1 訴状
資料2 判決文
あとがき
「違憲判決」が終わってみれば
弁護士 津留雅昭
訴訟団としての最終総括としては、一応の「勝訴判決」という形になったものの、時が経つにつれて、この判決をめぐる不可思議さや理不尽さに思いが募る。
1 判決は請求棄却、つまり完全敗訴であるのに「勝訴」であるとしたことの不可思議さ。勿論、これは、判決の中でも指摘されているように、憲法違反の行為が行われたとしても、直接に違憲性を問う道がなく、損害賠償(慰謝料)請求という形式を取らざるを得ないための歪みであることは言うまでもない。被告側にしてみれば、勝ったのに控訴が出来ないと不満を言うのも何か釈然としないものがある。このむなしさを正すには、憲法裁判所を設けようとか、現行法下で違憲審査を積極的にとの声はあるが、二十数年前の中曽根首相靖国参拝訴訟時の議論の後も、大した進歩は見られてはいない。
かくして、国民からしてみれば、違憲だと訴えを繰り返すことで、請求棄却の判決を積み重ねるばかりとなり、違憲の本丸には容易に近づけないという隘路(あいろ)に陥るばかりとなる。
2 次いで、およ真偽のほどはともかく、そのようなうわさが事実であるかもしれないという風に伝わってくるのも、尋常な状況ではないことを表している。
得体の知れぬ「暴力」が巷を席巻し、理性を圧殺しようとするかのようで鳥肌が立つ思いである。福岡判決の後の大阪地裁の二陣訴訟の判決が、小泉首相の参拝を私的なものとして、違憲判断を初手から全く回避してしまったのも、そんな世相に押されたのかもしれない。それやこれやで「勝訴」の美酒に酔うどころか、これからの日本の行く末への深い憂慮ばかりが脳裏に沈殿しつつある。
ともかく、この判決までに寄せられた、訴訟団はもとより多くの方々の努力や情熱を思う時、今一踏ん張りと気を持ち直そう。
目次
序章(現職首相の民事「敗訴」は初めて?;違憲性の判断は司法の責務)
第1章 小泉首相の靖国参拝と訴訟の経過(総裁選で靖国神社参拝を明言;再び「英霊」を作らせない! ほか)
第2章 原告の陳述書と証言(『神さまさようなら』を出版;遺族原告の苦悩と自覚 ほか)
第3章 「実質勝訴」判決(四十数年の「伝統と文化」;百ページの最終準備書面 ほか)
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