リアル・ベトナム―改革・開放の新世紀

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  • サイズ B6判/ページ数 396p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784750319261
  • NDC分類 302.231
  • Cコード C0036

出版社内容情報

記者としてハノイに駐在した著者が,取材や自身の生活体験をもとに綴った,伝統と変化のはざまで揺れ動く「リアルな」ベトナム。ゆるやかに変わりゆく人々の価値観,経済変動などが,ベトナム初体験の著者の目を通して新鮮に語られる。

はじめに

第1部 暮らし・文化
1  祖国でモデル・ビジネス
2 ファッション、ミス・コンテスト
3 女性の地位
4 結婚、家族
5 ポップス
6 映画
7 “海賊版天国”
8 インターネット
9 サッカー熱
10 オートバイ社会
11 イスラム教徒
12 民間信仰
13 亀と水牛……
第2部 社会
1 貧困
2 ストリート・チルドレン
3 ボートピープル
4 海外に出稼ぎ
5 「社会悪」
第3部 政治
1 ホー・チ・ミン
2 共産党
3 国会議員選挙
4 汚職
5 「治安」維持
第4部 経済
1 民間企業
2 コーヒー
3 豊饒のメコンデルタ
第5部 対外関係
1 二七〇万の海外同胞
2 初代米国大使
3 「ナマズ戦争」
4 戦争後遺症――枯れ葉剤
5 戦争後遺症――不発弾
6 社会主義の隣国――中国
7 国交樹立三〇年――日本

参考文献
ベトナムのホームページ
あとがき

はじめに
 はじめてベトナムの地を踏んだのは一九九五年三月。新聞記者としての出張取材で首都ハノイと南部の中心都市ホーチミン市(旧サイゴン)をあわせて一週間訪問した時のことだ。
 両市の中心部では、多数の商店や食堂、ミニホテルなどが軒を連ね、建築ラッシュに沸いていた。路上にはオートバイの群れが続き、けたたましいクラクションの音が絶え間なく鳴り響く。それまで体感したことがない、圧倒的なエネルギーだ。市場経済化と対外開放、全方位外交を進めるドイモイ(刷新)政策のもと、経済発展が軌道に乗り、日本を含む海外企業から有望な投資先として注目を集める国の姿をのぞかせていた。
 ホーチミン市ではその一方、両足のない男が台車に腹ばいになって歩道を移動しながら物乞いしている姿を見て衝撃を受けた。男がどんな理由で両足を失ったのかはわからないが、米国とのベトナム戦争や、カンボジアのポル・ポト派との戦闘などベトナムが戦った数々の戦争が想起された。また、老人や子どもの物乞いもいた。活気と一部の人びとの貧しさ、そして、日本人と似た顔をして箸でコメを食べる人びとの中での居心地のよさが印象に残る初訪問だった。

 それから約一年後の一則として、外務省に希望取材対象や質問内容を記した文書を事前に提出し、許可を得る必要がある。ハノイの事件のような当局に対する住民の抗議行動など、政権が取材させたくないとみられる事柄については許可が下りなかった。
 国内で売られる海外の英字週刊誌は、一部の記事が黒く塗りつぶされていることがあった。共産党・政府幹部の人事やスラム街についての記事などだ。記事が塗りつぶされることが何度かあった香港の週刊英字誌『ファー・イースタン・エコノミック・レビュー』の常駐記者は一九九六年一一月、事実上の国外退去処分を受けた。
 当局から取材の許可を得ることができても、取材の際には、一般の人びとから話を聞く場合でも役人が同席。インタビュー相手が役人を意識して言葉を選んでいるように感じた。
 それでも、取材に応じてくれた人びと、とりわけ一般の人びとの話は興味が尽きなかった。ベトナムは、ベトナム戦争をはじめ一九七〇年代までいくつもの戦争を経験した。自由主義体制だった旧南ベトナムはベトナム戦争終結後、社会主義体制へと移行した。そして一九八六年にはドイモイ政策による改革がはじまり、社会が大きく変容してきた。それだけにドラマチックな人生活発化している。
 共産党政権は二〇二〇年までに国を工業国にする目標を掲げ、ドイモイ政策のもとで工業化・近代化を推進。二〇〇五年までの五年間に年平均七・五%の経済成長率を達成し、二〇一〇年までに国内総生産を二〇〇〇年の一〇倍にすることを目指している。目標をわずかに下回っているものの、近年も年率約七%の経済成長を続け、国民一人あたりの平均年間所得は二〇〇二年には四三〇ドル(約四万七三〇〇円)と、九五年の二倍近くになった。海外に住む親類らからの送金など、公的統計には反映されない収入も多いと言われる。
 国営メディアによると、携帯電話を持つ人(加入者数)は一九九五年には約一万五〇〇〇人だけだったのが、二〇〇三年なかばには約二三〇万人まで増えた。海外旅行に出かける人も、九五年にはわずか約一万人だったのが、二〇〇二年には約四〇万人にのぼった。
 同時に農林水産業も輸出向け産品を中心に一層の振興が図られ、世界第二位のコメ輸出国の座をほぼ毎年維持し、コーヒーの輸出量でも第二位に躍り出た。
 また、ファッションや歌謡、映画など、文化やエンターテインメント活動も、一部は規制がゆるめられ、格段に充実してきた。
 一方でとなれたら幸いである。(後略)

目次

第1部 暮らし・文化(祖国でモデル・ビジネス;ファッション、ミス・コンテスト ほか)
第2部 社会(貧困;ストリート・チルドレン ほか)
第3部 政治(ホー・チ・ミン;共産党 ほか)
第4部 経済(民間企業;コーヒー ほか)
第5部 対外関係(二七〇万の海外同胞;初代米国大使 ほか)

著者等紹介

千葉文人[チバフミト]
1964年、宮城県生まれ。上智大学卒。1987年、読売新聞社入社。英字新聞部、外報部などを経て、1996~1997年、ベトナム・ハノイ支局駐在。2000年、NHK入局。現在、国際放送局制作センターに所属
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ガンジス川沐浴子

2
構成が教科書っぽい。項目ごとに文化や社会について知ることができる。2000年代の本だけど90年代の話もあって、ちょっと古い。暮らしとかは読んでいて楽しいけど、政治とかは興味がないと読むのが難しいような。2019/12/29

ろーじゃ

0
タイトル通り、リアルなベトナムを著者が紹介。文化や音楽、政治や社会問題を幅広く取り扱っていて、教科書的な本とは違った面白さがありました。著者の体験談と批評が上手くマッチした良い本です。2013/02/20

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