グローバル・テロリズムとイスラーム―穢れた聖戦

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  • サイズ B6判/ページ数 278p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784750319032
  • NDC分類 316.4
  • Cコード C0036

出版社内容情報

9.11後イスラームの名のもとに行われたテロの背景を、政治的・宗教的側面から冷静に検証。歴史的悲嘆、宗教的差異を乗り越え共存と協力を築くため、アメリカ人はイスラーム世界に対し、どのように考え行動すべきかをイスラーム研究の第一人者が提言する。

序文

第1章 現代テロリストの誕生
テロリストの生い立ち/イスラームのビジョン/ジハードとサウジアラビアの建国/アフガニスタンのジハード――聖戦士の誕生/サウジ・エリートの過激主義/スーダンと実業家ムジャーヒド/ターリバーンとイブン・ラーディン/アイマン・ザワーヒリー――医学部からジハードの大学へ/アフガニスタンと聖戦宣言

第2章 ジハードとはなにか
多様なジハード/ムハンマドのジハード/ヒジュラとジハード――迫害と衝突/防衛と拡大のためのジハード/初期の分派主義とテロリズム/スンナ派とシーア派のジハード/世界的ウンマの確立とジハード/革命的ジハード――神の名におけるテロ/イデオローグと革命的ジハード/イブン・タイミーヤ/一八世紀のジハード/イスラーム革命の先駆者たち/ハサン・アル・バンナーとマウラーナ・マウドゥーディー/サイイド・クトゥブ――イスラーム過激主義の父/神の軍隊――戦闘的ジハードの復讐/戦争とジハード/改宗のためのジハード/ジハードと殉教――究極の信仰告白

第3章 神の軍隊
カーバ聖殿占領/十字軍から西洋帝国主義へ/近代化とイスラーム改革運動/イスラームと近代国家/未来へ

イスラームの名にかけたテロ
 二〇〇一年九月一一日の惨事は、悲嘆と決意のうちでアメリカ人をひとつの国民としてまとめることになった。同時に、さまざまな階層のアメリカ人は、アメリカについて、世界的テロリズムについて、ムスリム世界について、難しい疑問を抱きはじめた。一〇年以上前、ソビエト連邦の崩壊と、一九九一年の湾岸戦争時のサッダーム・フサインの対西洋ジハードへ呼びかけの後を追うように、私は『イスラームの脅威――神話か現実か?』を著し、新しい「悪の帝国」を共産主義の脅威に代わるものとみなそうとする政府高官や政治解説者、メディアに応答した。
 悲しいことに、一〇年以上過ぎてもイスラームとムスリム世界に対する同様の疑問はいまだに問われている。なぜ、彼らはわれわれを憎むのか? なぜイスラームは他の宗教よりも戦闘的なのか。クルアーンはジハードあるいは聖戦について、なにを語るべきなのか。クルアーンはこの種の暴力やテロリズムを容赦するのか。西洋とイスラーム社会には文明の衝突があるのか。しかし、今はこれまで以上に、私たちがイスラームとテロリズムの源について学ぶことが重要となっている。
 テロリストの首謀者ウサーマ・イブン・命を呼びかけてきたが、北アフリカから東南アジアにわたっておこなわれた最も過激な運動の標的も影響も、一地方あるいは地域レベルのものにすぎなかった。ウサーマ・イブン・ラーディンとアル・カーイダは、その次の重要な一歩、国際的なジハードを象徴している。それはイスラーム世界の政府に対するジハードを宣言し、その地域の西洋の代表者たちや機関を攻撃するだけではなく、いまやアメリカと西洋をテロリズムという穢れた聖戦の主要な標的とみなしている。
 二〇世紀のアメリカの戦争は、他国の土地で戦われた。いまや、戦いは私たち自身の土地のうえで、私たちの経済的・政治的な力の象徴のうえにもたらされたのである。杭はすべての人々に振り上げられた。九月一一日のアメリカに対する攻撃は、まさに、私たちの危険を認め、すべての、あらゆる国々、文化、そして世界の人々を脅かす敵に対応するための警鐘とみなされている。
 二一世紀は、ふたつの主要なかつ急激に増大しつつある世界宗教、キリスト教とイスラームの世界的な対峙と、西洋とそれ以外の地域との間の関係を緊張させるグローバリゼーションの威圧によって支配されるであろう。いまは、文明の衝突を引き起こしたり、そのよける」というような心地よい言葉は、たんに軍事力だけでは最終的に勝つことのできない戦争においては、かつてないほど批判にさらされている。ムスリムと非ムスリムが一致協力して理解しあい、行動することも同様である。私たちすべての者は、ステレオタイプや、歴史的悲嘆、宗教的差異を乗り越えて、利害関係だけでなく私たちに共有される価値を認識し、私たちの共通の未来を築くために共に働くことを迫られている。(後略)

内容説明

著者は本書を、西洋の大多数の人々、ムスリムと同様に非ムスリムの人々のために著した。二一世紀には彼らの生活と共同体は複雑に絡み合っているからである。イスラーム世界は、もはや「向こう側」にはない。ムスリムは私たちの隣人であり、同僚であり、仲間の市民である。また、彼らの宗教もユダヤ教やキリスト教と同様にテロリズムを拒否している。「理解の橋を架ける」というような心地よい言葉は、たんに軍事力だけでは最終的に勝つことのできない戦争においては、かつてないほど批判にさらされている。ムスリムと非ムスリムが一致協力して理解しあい、行動することも同様である。私たちすべての者は、ステレオタイプや、歴史的悲嘆、宗教的差異を乗り越えて、利害関係だけでなく私たちに共有される価値を認識し、私たちの共通の未来を築くために共に働くことを迫られている。

目次

第1章 現代テロリストの誕生(テロリストの生い立ち;イスラームのビジョン ほか)
第2章 ジハードとはなにか(多様なジハード;ムハンマドのジハード ほか)
第3章 神の軍隊(カーバ聖殿占領;十字軍から西洋帝国主義へ ほか)
第4章 私たちはどこへ向かうのか?(イスラーム世界を理解するために;近代科学の生みの親 ほか)

著者等紹介

エスポズィート,ジョン・L.[エスポズィート,ジョンL.][Esposito,John L.]
ジョージタウン大学、ウォールシュ・スクール教授、専門は宗教学、国際関係学。「ムスリム・クリスチャン相互理解センター」(Center for Muslim‐Christian Understanding)の設立委員長、アメリカ・中東学会の元会長。「アメリカ合衆国でもっとも影響力のあるイスラーム研究者」、「アメリカで最も信頼されるイスラーム解説者」などといわれる。イタリア系でカトリック信者でもある

塩尻和子[シオジリカズコ]
1944年岡山市生まれ。67年大阪外国語大学アラビア語学科卒業、72年京都大学大学院修士課程中退、89年東京大学大学院博士課程単位取得退学。文学博士。現在、筑波大学大学院人文社会科学研究科哲学・思想専攻助教授。専門は比較宗教学、イスラーム思想、中東地域論など

杉山香織[スギヤマカオリ]
1974年伊丹市生まれ。1997年同志社大学商学部卒業、貿易会社勤務をへて2003年筑波大学大学院修士課程地域研究研究科修了。通関士資格をもつ。国際商業史、イスラーム圏の経済状況・商慣習などに関心がある
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