現代中国叢書
現代中国の教育

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  • サイズ B6判/ページ数 300p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784750318912
  • NDC分類 372.22
  • Cコード C0337

出版社内容情報

子育て、家庭教育、学校教育、社会教育…。中国人の教育の伝統とは何か。18世紀半ば以降導入された西洋近代の教育に伝統はいかに接ぎ木され、乗り換えられたか。独立した市民が近代を再確認し、21世紀教育の行方を考える道筋とは。

始めに―教育とは何か

第一章 現代中国教育とは
 第一節 中国人の教育観
 第二節 近代教育とは
 第三節 伝統、遺産と創造

第二章 現代中国教育法規
 第一節 中国教育法規の特徴と体系
 第二節 中国教育法規の歴史
 第三節 『中華人民共和国教育法』とその立法過程
 第四節 中国における教育法規の問題と課題

第三章 現代中国教育行政制度
 第一節 教育行政の定義とその歴史
 第二節 現行の教育行政制度とその変遷
 第三節 学校制度について

第四章 現代中国教育財政
 第一節 教育財政の定義
 第二節 中国教育財政のしくみと現状
 第三節 中国の教育費の実情

第五章 現代中国初等教育
 第一節 初等教育の近代的な発端
 第二節 初等教育の拡張期
 第三節 初等教育の復興期
 第四節 初等教育の発展期

第六章 現代中国中等教育
 第一節 中等教育の発端
 第二節 中等教育の実験期
 第三節 中等教育の拡張期

第七章 現代中国高等教育
 第一節 近代高等教育の嚆矢
 第二節 近代高等教育の実験
 第三節 高等教育の新たな挑戦
始めに―教育とは何か
 教育とは何か?という問いにはさまざまな答えが用意できる。しかも、いままで、哲学者や教育学者をはじめ無数の学者が回答を出してきた。しかし、これといった決まった答えがないまま、今日に至っても、なお、問い続けられている。
 本書は教育とは何かという問いに答えるためのものではない。そもそも、このような問いに答えられるような力量を筆者は持っていないからである。しかし、この問いはおそらく現代人にとっては誰も避けて通れないものであろう。
 中国生まれ、中国育ちの私は、子どもの時に聞いた以下の話がずっと脳裏にこびりついている。
 いつの時代か分からない、それは上古で孔子、孟子の時代よりも早いであろう。ある家に子どもが生まれた。待望の跡継ぎが生まれたので、両親はもとより、祖父母も大喜びである。しかし、艱難なる世の中をどう生きていくかと考えると、さすがの親もわが子の将来を案じずにはいられない。この子に将来、何になってもらおうか、考えあぐねて親たちは相談した。百獣の王はトラであるから、この子にトラのように成長することを願おうと考えたら、いやいや、トラは猟師に捕らわれるからいかん。ならば、大海原を泳ぐも、激流を遡って登りつめれば龍になる。その試練を教育と解釈し、天下の親は我が子の登龍門の夢を見て、教育を受けさせている。
 大人になって、日本に来てからも、何らかの形でこの話が私の専攻選定、職業選びに影響力を及ぼしたのではないかと思う。
 中国教育についての稿を起こすときに、まず、この伝説が頭の中でよみがえった。これは、中国人の教育信仰の根っこにあるもので、子育てから家庭教育、社会教育、学校教育まですべてを支えている教育の理念でもある。教育という人間の営みは人類の誕生と同時に発生し、長い歴史を有しているから、その意味から言えば、常に古くて新しい問題を抱えている。人間は昔からの問題を引きずっていながら、新しい課題に直面する。そして、そのような問題を解決するカギは「学=教育」にしかないといわれている。しかし、子育てに根付くアジアの伝統教育は、18世紀半ばから西洋の教育(Education)によって接木され、乗り換えられていた。何時からか、我々教育者は意識していようと、無意識であろうと、東洋の若者に西欧の手法で、西欧の内容や概念を、西欧流に教えるようになった。そして、それを嬉々として教育の「近代化」と称する。 そのために、教育が何をしなければならないのか、いや、その前に、教育とは何なのか、あいまいにしないで問わなければならないのではないか、と考えながら、パソコンのキーボードを叩いている。

目次

始めに 教育とは何か
第1章 現代中国教育とは
第2章 現代中国教育法規
第3章 現代中国教育行政制度
第4章 現代中国教育財政
第5章 現代中国初等教育
第6章 現代中国中等教育
第7章 現代中国高等教育
第8章 現代中国教師教育
第9章 現代中国の学校教科書
終わりに グローバリゼーション・市場化・情報化の波間で

著者等紹介

王智新[オウチシン]
宮崎公立大学人文学部教授。1952年中国上海生まれ。1975年上海外国語大学日本語科卒、中国華東師範大学専任講師を経て、1985年来日。千葉大学、東京大学などで教育学を専攻。1994年宮崎公立大学助教授就任。1998年から現職。専攻は教育学・比較教育学・中日教育文化関係史・植民地教育史
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