ラオス少数民族の教育問題

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  • サイズ A5判/ページ数 223p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784750318608
  • NDC分類 372.236
  • Cコード C0036

出版社内容情報

ラオスにおける民族間の教育格差の現状とその要因を綿密な現地調査により明らかにする。言語、文化・風習の違いなど、今日日本が抱える異文化・多文化教育を熟考する上でも有用な研究論文。

序 章
 第1節 問題の所在
 第2節 本研究の目的と方法
 第3節 本研究の意義

第1章 ラオスにおける教育史と教育制度の現状
 第1節 社会主義政権成立までの教育
 第2節 社会主義政権成立後の教育
 第3節 現在の教育行政と学校制度
 第4節 一般教育とカリキュラム
 第5節 教育に関する憲法と予算

第2章 ラオスにおける少数民族と民族間教育格差の現状
 第1節 ラオスにおける少数民族
 第2節 民族間に広がる教育格差

第3章 開発途上国およびラオスにおける少数民族の教育問題
 第1節 開発途上国と少数民族の教育問題
 第2節 ラオスにおける少数民族の教育格差をめぐる議論
 第3節 本研究の視点

第4章 少数民族モンが抱える教育問題
 第1節 モンの初等教育問題をめぐる定性調査
 第2節 教育の需要者が抱える問題
 第3節 教育の提供側の言い分──二分化された教育関係者の回答
 第4節 実生活とカリキュラムのギャップ

第5章 教室で生み出される民族間の教育格差
 第1節 学校における参与観察の意味
 第2節 教室に見る教育格差の現実 謝  辞
 参考文献

  第2章 添付資料1 各言語系統グループ別民族集団名
      添付資料2 各県別民族系統の比率
  第4章 添付資料1 調査対象の属性
      添付資料2 調査対象への質問

 索  引


"第1節 問題の所在

 ラオス人民民主共和国(以下、ラオスと記す)は、東南アジアに位置し、周囲をタイ、カンボジア、ベトナム、 中国、ミャンマーに囲まれた内陸国である。面積は、日本の本州の大きさに相当する24万km2で、人口は537.7万人(2001年)である。1人当たりの国民総生産392USドル(2001年)は、世界でほぼ100位の数字であり、現在でも低開発国として位置づけられる開発途上国(以下、途上国と記す)である。
 ラオスは20世紀に入ってもフランスの統治や内戦の影響を受けていたため、社会主義政権が成立する1975年まで教育改革や教育システムの整備が行われることはなかった。1975年にはじめて教育改革が行われた時、政府は改革の一環として、国語であるラオス語を全教育レベルにおける教授言語として定め、全国に散在する少数民族にもラオス語による学習および多数派民族と同じ学習カリキュラムを義務づける同化政策の方針をとった。これは開発途上にあるラオスが、「国を統一し、少数民族に対してもひとまとまりのラオス国民としての意識を高めさせるための国策」であった。 国家統一を少しでも早く成し遂げるためには、少数民族を同化せざるを得なかったのである(Vientianまで上昇している。
 しかしながら、ラオスの教育セクターの発展を検討するうえで考慮しなければならないことは、教育機会拡大の恩恵を受けたのが多数派民族の子どもたちに偏っていることである。例えば新経済体制への移行後も少数民族の子どもたちに対する教育予算配分や助成金は極めて少ないことが問題として挙げられる。アジア開発銀行(ADB)のデータが示すように、主に多数派民族が居住する都市部の生徒1人当たりの助成金の平均は男子3,348キープ(1USドル=約7,000キープ)、女子2,355キープであるのに対して、農村地帯の少数民族の生徒には男子2,602キープ、女子には1,205キープしか配当されていない(Asian Development Bank 1996,p.22)。このような事実は民族間にどのような教育格差をもたらしているだろうか。"

目次

第1章 ラオスにおける教育史と教育制度の現状
第2章 ラオスにおける少数民族と民族間教育格差の現状
第3章 開発途上国およびラオスにおける少数民族の教育問題
少数民族モンが抱える教育問題
第5章 教室で生み出される民族間の教育格差
第6章 教育格差をもたらす要因

著者等紹介

乾美紀[イヌイミキ]
1992年、関西学院大学社会学部卒業後渡米、日本語インターン教師を経て、1995年、ウィスコンシン州立大学ラクロス校教育学部大学院卒業。卒業後、日本人学校(ニューヨーク)において日本語教育および英語教育に携わる。2001年、神戸大学大学院国際協力研究科博士課程修了(学術)。現在、日本学術振興会特別研究員。聖和大学・相愛大学ほか非常勤講師
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感想・レビュー

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Akihiro Nishio

17
ラオス人に教えてもらった本。ラオスの教育制度の変遷と少数民族問題への対応がよくわかる。しかし、日本はすごい国だね。ラオスでは少数民族は母語で小学校教育も受けれないのに、日本ではこんなマニアックなテーマの本まで母国語で読めちゃう。個人的には全国一律でラオ語を教授言語とするのはしょうがないかなと思う。バスク語みたいに、生活言語としては不必要になっても、生活レベルが上がるにつれて、かえって自分たちのアイデンティティを得るために学習者が増えるんじゃないかな、ラオスの少数民族の母語も。自分はわりと楽観的に考えている2016/09/01

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