出版社内容情報
武士の世のイメージが強い鎌倉時代。京都に住む天皇・貴族は日陰の存在だったのか。鎌倉の権力闘争にも影響を及ぼした都の動向をつぶさに追い、承久の乱の前夜から両統迭立を経て南北朝時代にいたる京都の歴史を描く。
内容説明
武士の世のイメージが強い鎌倉時代。京都に住む天皇・貴族は日陰の存在だったのか。鎌倉の権力闘争にも影響を及ぼした都の動向をつぶさに追い、承久の乱の前夜から両統迭立を経て南北朝時代にいたる京都の歴史を描く。
目次
鎌倉時代の京都を語る意味―プロローグ
1 後鳥羽院政の成立と鎌倉の政変
2 鎌倉御家人の在京活動
3 権門の空間に見る公武関係
4 承久の乱
5 九条家・西園寺家と鎌倉幕府
6 両統と分立とモンゴル襲来
7 両統迭立への道
8 後醍醐天皇と討幕
9 七条町の殷賑
中世都市への変貌―エピローグ
著者等紹介
野口実[ノグチミノル]
1951年千葉県に生まれる。現在、京都女子大学名誉教授、同大学宗教・文化研究所客員研究員、文学博士
長村祥知[ナガムラヨシトモ]
1982年京都府に生まれる。現在、富山大学学術研究部人文科学系講師、博士(人間・環境学)
坂口太郎[サカグチタロウ]
1982年大阪府に生まれる。現在、高野山大学文学部准教授、博士(人間・環境学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南北
45
後鳥羽院政から正中の変までの日本中世史。従来「吾妻鏡」を基に東国からの視点で語られることの多い鎌倉時代だが、本書では公家の日記など京都を中心として視点でこの時代を捉え直そうとした点は興味深く感じた。南北朝時代を生み出した経済基盤としての荘園群には長講堂領と八条院領があるが、この2つが様々な経緯を経て持明院統と大覚寺統の所領へと相続されていく記述も納得できた。現在の京都駅の北側にあった七条町に八条院の広大な屋敷があり、武器や武具を扱う店や仏像制作を行う仏所などの記述は当時の様子が再現されていたと思う。2023/11/10
MUNEKAZ
17
鎌倉時代の「京都」。なんとなく歴史の舞台から外れたように思えるが、実際は鎌倉と並ぶ政治の中心地として、求心力を維持していたことを論じる。持明院統・大覚寺統の分裂は、京都の政治にダイナミズムを生み、両統とも自派の影響力を増すために「公家徳政」を繰り返す。それは朝廷の政治的な自信に繋がり、後醍醐天皇の「新政」の呼び水にもなる。院や治天の視点から鎌倉時代史を再構成することで、東国中心の政治史を脱し、京・鎌倉2つの中心から鎌倉時代を捉える内容になっている。イメージに反し、まだまだ院や朝廷が元気だった時代である。2022/07/15
chang_ume
14
京都政界から見た鎌倉時代史。東国の田舎から出現・展開とされた武士の通俗理解は、王家・国家・首都の守護を本分とする権門として再定義・相対化され、鎌倉殿の本宅も六波羅(檜皮屋)に再措定されていく。全体に関しては鎌倉後期の王統分立下で繰り広げられた公家徳政が重要で、亀山院政・伏見親政・後宇多院政を画期とした訴訟制度改革に焦点が当たる。また一方、王家領相続を巡り各王統内で再分裂の危機が生じ、その矛盾克服として後醍醐討幕の意義も理解されていく。中世京都の都市史解説も充実で、中世前期理解の決定版です。大変面白かった。2022/08/24
アメヲトコ
7
2022年7月刊。中世前期の政治史が中心。これまでこの時代は鎌倉幕府を主体として語られ、「鎌倉時代」と称されていましたが、本書では鎌倉の動向は京都の政局と不可分なものであったことを説き、プロローグでは「京・鎌倉時代」という時代区分を提唱します。ただし本文では3人とも「鎌倉時代」(坂口氏は「鎌倉後期」)を使っていて、まだ遠慮があるような。七条町についての9章も興味深い。2023/03/30
onepei
6
たしかに公武政権の時代だったと納得2022/08/07