出版社内容情報
昔の人びとは、どんな仕事でどれほどの給与を得て、生活水準はどの程度だったのか。賃金額はどう決められ、その背景にある社会はどう変化していったのか。正倉院に保管された日本最古の賃金記録から、明治時代の職人の収入までの記録・史料を博捜し、推計値を導き出す過程を丹念に解説。1500年にわたる日本の賃金史を、数字とデータで読み解く。
内容説明
奈良時代の日本最古の賃金記録から、明治時代の職人の収入まで―。史料を博捜し、昔の人びとの賃金の高さや生活水準に迫る分析手法を丹念に解説する。一五〇〇年にわたる日本の賃金史を、数字とデータで読み解く。
目次
歴史にあらわれた賃金―プロローグ
古代 日本の賃金のはじまり(神話と貨幣;古代の労働者たち;律令官人の仕事と生活;古代の格差;銭の使い方)
中世 職人の誕生とその時代(浸透する銭貨;職人の時代;中世職人の賃金)
近世 都市化の進展と職業の多様化(近世都市の労働者たち;都市に生まれた職業;災害と賃金;賃金に関係するもの;長期の賃金を概観する;新しい賃金史研究)
近代へ(変化する職人たち;工業化のなかで)
近代の職人はどのように描かれたのか―エピローグ
著者等紹介
高島正憲[タカシママサノリ]
1974年、大阪府に生まれる。現在、関西学院大学経済学部准教授、博士(経済学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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PETE
5
資料が特定の地域・職業に限られるなかで、数値データの偏りを覚悟しながら、賃金と物価の関係を明らかにする研究史の途上の一冊なんだけれども、江戸時代のトンデモない仕事の話が面白すぎて、逆に各時代ごとのトンデモ仕事史の方が興味深そうな気がしてきた。2023/12/09
天婦羅★三杯酢
3
ちゃんとした資料が乏しい経済史の中でも、”上級国民”が関わりたくない下郎どもの給金ともなると、推測でものをいわざるを得ない所もおおいのだろうなと。そんな中でも数少ない記録を元に大胆に賃金を推定して論じているのは、今後の研究が進めばまた改まるところもあるだろうけど、ある種のマイルストーンとして後世の研究者の導きともなるのだろうなぁと。 当たり前と言えば当たり前だけど、熟練工と被熟練者との間で賃金に格差があり、しかし誰でも最初は入門者だったことを考えると、キャリア形成がどのように出来てきたかなどは今後の課題2024/02/15
四不人
3
百年単位の実質賃金の動態を明らかにする、という志は素晴らしい。手法も反証可能性を意識して慎重で論理的だ。ただ、その分読み物としては面白みが少ない。おそらくは数百年に渡って変化が少ない、という結果のせいだけど、変化がないということ自体が重要なのじゃないかなあ。経済成長とか、そのための「経済学」自体が本来必要の無いものなんじゃないのか。そういう「大胆な作業仮説」が示されていればもっと読み物として面白かったのに。面白みは「珍商売の紹介」みたいな余談で生まれるもんじゃないと思うな。2024/01/12
はひへほ
2
古代、中世、近世の賃金の歴史を数量経済史として追いかけてた。データがあまり存在してない中で苦労して紡ぎ上げてて面白かったし、素人でも分かるように方法が丁寧に解説されてて読みやすかった。2024/01/14
ほなみ
2
奈良時代の和同開珎から始まり明治時代ごろまでの「賃金」の歴史が記載されている。 江戸時代まで、多くが農民であり貨幣経済というよりは米経済、布経済で生きていきた日本ではある程度例外的な研究なのかもしれない。 内容はまぁまぁ資料少ないし仕方ないよねって感じではあるものの著者の姿勢は大好感。 素人がこう言った統計的な数字を見るとついつい騙されてしまうが、新たな資料が出てきたら変わる可能性があることや、同じ数字でも当時の生活をイメージした上で捉える必要があることなども記載されており、数字と向き合う姿勢も学べる。2023/12/19