出版社内容情報
疫病の流行により多くの人命が失われた古代。それは単なる自然災害だったのか。藤原四兄弟が全滅した天平の大流行をはじめ、奈良・平安の都を繰り返し襲った事例を読み解くと、都市環境、食料生産体制、文化や倫理など、当時の社会の構造的問題がみえてくる。疫病対策や死者数の実態に触れつつ、ヒト社会の「隣人」ともいうべき疫病の姿に迫る。
内容説明
古代の疫病は、単なる自然災害だったのか。天平の大流行をはじめ数々の事例を読み解くと、当時の社会が抱える問題がみえてくる。疫病対策や死者数の実態に触れつつ、ヒト社会の「隣人」ともいうべき疫病の姿に迫る。
目次
疫病から古代の社会を考える―プロローグ
疫病へのまなざしと二つの大疫病(疫病という概念;奈良時代の大疫病;平安時代の大疫病;大疫病の共通点)
古代疫病流行の仕組み(都と疫病;疫病と農業;信仰と感染の観念)
疫病の時代相と人々の向き合い方(奈良時代の疫病;桓武朝の転機―疫癘間発;古代における疫病対策)
人間社会と疫病の姿―エピローグ
著者等紹介
本庄総子[ホンジョウフサコ]
1982年、京都府に生まれる。現在、京都府立大学文学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
115
新型コロナ後の日本人には疫病による社会の混乱は記憶に新しいが、医療も支援制度もなかった古代ではカオスだったはずだ。疫病に見舞われた奈良時代と平安期の状況を、残された史料から社会に及ぼした影響を読み解く。どれも新種の病気が対外窓口だった太宰府から侵入し、人の集中する都のあった畿内で拡大した。飢饉と流行病の因果関係も分析し、稲作に依存した財政構造とアイルランドのジャガイモ飢饉に共通する問題点をあぶり出す。各時代ごとに特有の社会構造上のリスクがあり、人災の側面を抑える経験の伝承しか手のない悲惨さが浮かび上がる。2023/10/14