出版社内容情報
日本史上最も長く続いた年号「昭和」が、昭和天皇の譲位によって実際より早く終わる可能性は、少なくとも四回あった。敗戦直後、東京裁判判決、講和条約発効、皇太子の御成婚…。昭和天皇の戦争責任に端を発する退位問題はどのように
内容説明
昭和天皇が譲位し、昭和が早く終わる可能性は四回あった。天皇の戦争責任に端を発した退位問題はいかに巻き起こり、論議されたのか。日本社会における天皇の位置づけを考え、戦後日本人が選択しなかった道を探る。
目次
敗戦の章(大日本帝国の残照;解禁された天皇制論議;日本国憲法の成立)
東京裁判の章(戦争責任と退位問題;憲法再検討問題;判決のとき)
再軍備の章(日本国憲法下の天皇の役割;吉田茂と日本国憲法;再軍備と統帥権問題)
御成婚の章(皇太子への期待;ミッチーブーム;昭和の桎梏)
著者等紹介
冨永望[トミナガノゾム]
1974年、船橋市に生まれる。2002年、京都大学大学院文学研究科現代文化学専攻博士後期課程単位取得満期退学、京都大学博士(文学)。現在、京都大学大学文書館事務補佐員、大阪産業大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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バルジ
2
著者の主張がかなり明瞭に示されているので好みが分かれるかもしれないが、個人的には昭和天皇退位を巡る議論が大枠で知れて面白かった。 昭和30年代まで事あるごとに提起された退位論であるが、一部の天皇制廃止論者を除く大部分の議論が「天皇制を守る」ために提起されていたというのは興味深い。道義的責任をどう果たすのか、退位か在位して責任を果たすかで昭和天皇本人も相当の葛藤があったことはよく知られているが、「君主」として免れられない政治的制約を受けていたことはもっと意識されて良い気がする。2019/08/18
佐藤丈宗
2
戦後、昭和天皇退位論が4回持ち上がったが、昭和天皇自身も日本人も退位という選択肢を選ばなかった(そして退位論は出ても天皇制廃止論は少数派に止まった)。「戦争責任」という十字架を負った昭和天皇が在位し続けたことで、憲法改正論が封じ込まれることになった戦後日本の複雑さ。退位論も世界的に憲法改正論も戦後間もなく持ち上がったものの、結局は「長い昭和」の中で曖昧になり、いま噴き出してきている。どちら問題もいまだまともに議論出来ていない日本の戦後は果たして幸せな時代と呼べるのだろうか?2017/09/12
ソーシャ
2
戦後に登場した天皇制の存続を前提とした昭和天皇の退位をめぐる論争について見ていくことで「戦後の日本人が選択しなかった道」を見つめてみようという本。著者の語りかけるような口調にも好感を持ちましたが、内容面では、戦後の改憲論議や憲法解釈の裏には政治的にかなり微妙な問題があったんだということを知るとともに「責任をとる」ということの難しさを感じました。この本は「昭和は長過ぎた。平成はもっと早くに始まるべきではなかったのではないだろうか」という言葉で締められていますが、色々と考えさせられます。2014/07/30
Stella
2
敗戦、戦争責任、立太子、皇太子御成婚と節目で巻き起こった退位論の歴史。老齢による退位論は盛り上がらなかったけど、ローマ教皇やスペイン国王が生前退位してることを考えると生前退位復活の可能性はあるのかな。2014/06/04
onepei
1
日本が今とはちょっとちがう国になっていたのかも。2014/06/22