出版社内容情報
★歴史文化ライブラリー 通巻300冊達成!
好評3刷
内容説明
これまで「仏教は近世には堕落し、儒教に取って代わられた」とされてきた。しかし、中国からの黄檗宗の影響や出版文化の隆盛により、仏教は民衆世界にまで大きく華ひらいていた。いま新しい近世仏教のすがたを描く。
目次
近世仏教を見なおす―プロローグ
中世から近世へ
開かれた近世
思想と実践
信仰の広がり
近世から近代へ―エピローグ
著者等紹介
末木文美士[スエキフミヒコ]
1949年、山梨県に生まれる。1978年、東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。現在、国際日本文化研究センター教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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syaori
69
近世仏教についての本。近世は仏教が堕落し儒学が盛んだったとのイメージに対し、寺請制度や幕府の仏教式葬儀の強制で仏教が広く普及、その中で隠元らが世俗の活動に合わせた教えを説き、その臨機応変な多様性と世俗性が「不純」とされて仏教堕落論に繋がったことなどが語られます。また信仰の普及が売茶翁や若冲に代表される芸術・文化の方面への多様な展開を生んだことのほか、キリスト教、儒教、神道などとの関係等を示すことで複数の宗教が「複合的に補完」し合っていた様相も見えてきて、現在に繋がる日本人の宗教観も窺える興味深い本でした。2023/05/02
ネギっ子gen
51
【仏教はもともと世俗を超えた真理を追究する故に、「顕」の世界より「冥」の世界と深く関わる】「仏教は近世には堕落し、儒教に取って代わられた」とされてきた。しかし、中国からの黄檗宗の影響や出版文化の隆盛により、仏教は民衆世界にまで華開いたとする書。巻末に参考文献多数。2010年刊。<仏教の創造的なエネルギーは近世の半ばまで継続するが、近世後期には次第に惰性に堕し、活力を失っていった。近世仏教堕落論が出てきたのは、おそらくこのような近世末の仏教の実態に基づいて、近世仏教全体を見ていたからではないだろうか>と。⇒2024/03/27
メルセ・ひすい
3
13-127 赤73 ★5 浄土真宗は阿弥陀如来の絶対主義展開。一神教キリシタンバテレンもマッサオ。。 蓮如パワー全開で混乱期の庶民の精神の安寧を念仏から極楽往生へ… 目から鱗の 末木論文 近世の仏教は、幕府の支配下で堕落し、儒教や国学など新しい思想に取って代わられた。それは果たして真実なのか。黄檗宗の影響や出版文化の隆盛により、民衆世界にまで大きく華ひらいていた近世仏教の姿を描く。 2010/08/25
令和の殉教者
1
近世の仏教は注目されることが少ない。信長はキリシタンを保護したのであったし、江戸時代の思想は儒学中心とみなされる。また、仏教内部でも近世は戒律の緩みが批判される。しかし、江戸幕府は葬儀を仏式で行うことを強いたし、宗門改帳は戸籍の役割を果たした。活版印刷の普及で仏典や仏教書は民衆の目に触れるようになる。これを葬式仏教として批判するのは容易いが、近世仏教が民衆に根付き、政治的な力も振るっていた側面は評価に値する。2023/02/08
橘 劫
1
思想史に詳しくない自分でもあっさり優しく丁寧に書かれた一冊。鎌倉から幕末までの潮流を説明してくれて、なおかつ一般常識的な知識から起点としてくれているから、入り込みやすい。読み終わったあとは近世の思想の流れが読む前と受け取り方が変わっている。とてもいい本でした2019/05/11