内容説明
琉球王国―それは中国や日本、朝鮮、東南アジアと活発に交流する海洋王国であった。王国の隆盛を支えた国際関係や波濤の海を越えた船舶の謎、国際港・那覇の舞台裏まで、アジアの架け橋となった歴史の風景を旅する。
目次
はてしない物語のなかへ―プロローグ
東シナ海を越えて(中国との出会い;王国の船出;冊封体制の一員となる)
大交易時代の出現(中継貿易の推進;中国人パワーの活用;東南アジアへの進出)
貿易国家の舞台裏(国営事業としての海外貿易;那覇港をめぐる状況)
琉球、その後―エピローグ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あきあかね
26
「綾なす水押しぬきてぃ 走い出たる那覇港 綾なす水押しぬきてぃ 思いや果てぃねん旅心」 那覇の港を出て中国へと渡る琉球王国の進貢船を歌う、りんけんバンドの『ふなやれ』の曲は、「綾なす水」という美しい詞と雄大な調べがいつまでも耳に残る。 本書は琉球王国史の中から、中世の海外貿易史に焦点を当てている。中国の帝国を中心として、周辺の国々が進貢を行う「冊封体制」に琉球王国も組み込まれていった。遥かな海を越えて中国大陸に着いた後も、福州から北京までは往復六千キロメートルにのぼる長途の旅。過酷な冬の旅で命を⇒2022/05/07
二人娘の父
13
琉球(=沖縄本島)を中心にしたアジア地図を見ると、この場所がいかにアジアにとって重要だった場所なのかがよく分かる。以前からそのことは認識していたつもりだったが、本書を読んでさらにその認識は深まり、広がる。とにかく著者の行動力がすごい。東南アジア諸国に直接足を運び、琉球王国の足跡をたどるエネルギーに圧倒される。本書で学べたもう一点は、琉球王国が「武器も持たない平和な王国」というのは革新勢力がつくりあげた幻想だ、という指摘。薩摩に圧倒された戦闘力ではあるが、武力を持っていなかった訳ではないとの指摘に納得した。2022/01/07
陽香
1
199908012017/07/13
Hiroki Nishizumi
1
琉球史のなかから古琉球(中世)の海外貿易史についてまとめた入門書。14世紀から16世紀あたりまで。平易な文で読みやすい。ただひとつ気になったのは、明の琉球優遇政策の背景として、当時沖縄で大量飼っていた馬を提供したことをあげている。まだモンゴル勢力の残党とのいざこざが多く明では馬の需要が大きかったとのことだが、そのころ沖縄で馬が、それも戦闘に役立ちそうな馬が大量に居たのだろうかと疑問が残った。別途調べたい。2012/04/22
印度 洋一郎
1
14世紀に明朝が接触してきてから、大航海貿易時代を迎えた琉球王国の歴史についての本。琉球は国策として貿易立国を目指したが、その背景には明朝の海禁政策と日本の内乱(南北朝から戦国)という、東アジアの二大勢力の力の空白を埋めるというタイミングの良さがあった。最盛期には遠くマラッカまで行って、ポルトガル人やアラブ人とも取引するほどのネットワークもあったとか。琉球には貿易と国防と兼ねた官営の組織があり、決して「非武装平和主義の島」ではなかった事にも言及している。那覇の港には砲台も設置され、軍が常駐していたらしい。2011/10/01