内容説明
「外国に支配されようが、徳川の世の中に戻ろうが、飯さえ食えれば文句無い」。明治初年の民衆はこううそぶいた。そこには、近代社会への反発と、政治から切り離されたことによる客分意識が横たわっていたのである。だが、その人々が、やがて対外戦争に同調していったのはなぜか。政治文化の視点から、国民意識が創出される姿を描き、近代を問い直す。
目次
はじめに 客分というスタンス
1 民衆にとっての「政事」
2 民衆と自由民権運動
3 国民化の回路
4 仁政のゆくえ
おわりに せめぎあいの場を生きる
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Eiki Natori
6
コロナ禍で死と隣り合わせにさせられ、五輪強行されても、日本人のメダル獲得に熱狂する一方、半数が投票を棄権する。最低限の判断力があれば警戒すべき維新や小池百合子を一定数の人が支持するなど、私は同胞が理解できないことが多々ある。 「誰が支配しようが飯さえ食えれば文句ない」という民衆が、「国民」意識を持つまでの過程であり、日本人を知る上で重要な研究。 自由民権運動、米騒動などを通じ、「反政府」的に「国民」意識が芽生え、それを国家が絡め取っていく。しばしば、それに使われたのが「万歳」であり国旗国家ということだ。2021/08/08
aeg55
4
「富者にとって仁政からの解放はまた、村共同体からの解放でもあった。」 これが長年疑問に思っていた事への解だった。 長い鎖国の時代からなぜ日本は転換したのか?民主主義や資本主義へなぜ短期間で移行したのか?… 結局、為政者が庶民を統治する代わりに徳義や仁政を施す事から回避する為に非常に都合が良いシステムであった、という事のようである。 日清戦争を契機に庶民が挙って国民となっていった結果、ファシズムを生み出し日中戦争を引き起こしたという事になる。2021/07/09
ぷっしー
3
「日本国民」がいかにして作られていったのかが論じられている本 日本の国民国家論を語る場合には読んでおきたい一冊
Hiroyuki
2
客分意識というのを慣習的な文化と解釈すればE.P.トンプソンの『イングランド労働者階級の形成』で指摘されたモラルエコノミーの問題としても読めるような気がする。2015/06/17
Hiroyuki
2
内容もさることながら、平易な文体で着実に議論を展開していくその文体に感銘を受けました。ちらっとフーコーなどにも触れながら何せよケレン味がない。簡単な言葉で複雑なことを語る好例だと思います。私もこういう文が書きたい。2010/04/17
-
- 和書
- シェイクスピアの悲劇