内容説明
科学や医療の進歩により、「いのち」をめぐる問題はかつてないほど複雑になっている。「正解」を見つけにくい問いの前で、それでも考えることをやめないために、生命倫理学が蓄積してきた「考えるための道具・すじ道」とは。
目次
答えの出ないことを考え続けるために―生命倫理学という学問
生命倫理はどこから来て、どこへ向かうのか?―生命倫理の歴史と日本への導入
身体から切り離された精子・卵子・受精卵―生殖補助技術が問いかける親子の絆
選ぶ技術・選ぶ人―出生前診断のもたらす問い
「夢の技術」を立ち止まって考える―再生医療
知りたいのはどんな情報ですか?―診療と研究参加のインフォームド・コンセント
患者主体の医療―難病ALSの立場から
「老いて介護されること」とは―介護される者の自己決定
最期まで生きるために―ホスピス・緩和ケアの現場から
「自分らしく、人間らしく」死にたい?―安楽死・尊厳死
人の死をめぐるジレンマ
医は仁術?算術?
強く・美しく・賢く・健康に?
人間はどこまで機械なのか
軍事医学研究はどこまで特殊か
著者等紹介
玉井真理子[タマイマリコ]
信州大学医学部准教授。専攻は心理学
大谷いづみ[オオタニイズミ]
立命館大学産業社会学部教授。専攻は生命倫理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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19
《生命倫理の教科書》はじめにの冒頭で現役医師であり小説家の海堂尊氏のお話が書かれています。そこからもう興味深く。初心者向けに少々やわらかい倫理学の書。読書中で難しい問題『?』が出てきた時にこの書に度々立ち返る。必ずしも答えてはくれないが、何かしらの思考に働いてくれています。それというのもまだまだ十分な議論をしつくす事が出来てない分野であるからである。例えば生命倫理とジェンダーへの取り組みも1990年代から徐々に議題とされ日が浅い、この視点は倫理に明らかに欠けている反省部分。まだ発展途上にある印象を持つ。2022/08/22
バーニング
4
有斐閣アルマのシリーズでは最も入門的な区分がされているが、思った以上に本格的な生命倫理入門といった感じの一冊になっている。トピックも出生前診断や代理出産といった生命の誕生にまつわるテーマや、ALSやホスピス、高齢者介護といったケアにまつわるテーマ、そしてエンハンスメントや軍事医学といった人体のデザインにまつわるテーマなど幅広く、どれも興味深く読んだ。2022/06/10
kaku
4
生殖医療やドーピング、尊厳死など様々な生命倫理上の問題に言及。初心者用なので読みやすい。関係する法制度についても国内外にわたり紹介されていて、日本と世界のズレも知ることができる。2014/07/27
じゃくお
3
仏教者として命を考えるなら、生命倫理についても学ばなくてはならない。仏教を通してしか命を考えていなかった私には本書からの発見が多かった。生命倫理について考える時には学際的な視点が必要だと述べられているので、私は浄土真宗を通して考えてみた。そうすると、現代仏教に課せられた大きな課題が浮き彫りになる。鎌倉時代においては浄土真宗が大衆の生老病死を救う手立てとして機能していたのだが、現代が抱える命の問題に対して浄土真宗が訴えられることは少ない。大乗菩薩道を歩むべき者は現代の生命とどう向き合えばよいのか。2021/04/13
やんま
3
本を読むことの楽しさをひしひしと感じた。自分では思い至らないことを知れるというのは読み物の醍醐味であろう。 最近は少し本から離れていたので、これを気にまたインプットをしたい。 さて、前文からわかる通り、内容はとても面白かった。常に自分の抱えた疑問点の上をいく問いがあり、刺激的だった。 エンハンスメントについては若干腑に落ちなかった部分もあるものの、生命についての問題は、人ならば専門的知識がなくとも多かれ少なかれ直面し考える問題であるはずなので、とにかく一度読むことをおすすめしたい。2018/02/08