内容説明
江戸幕府八代将軍徳川吉宗が、徳川宗家以外からはじめて将軍になったとき、社会は低成長期にあり、政治の停滞、財政悪化、災害・疫病の発生など厳しい局面を迎えていた。その状況を打開するため、吉宗は、二九年にわたり強力なリーダーシップを発揮し、国家と社会の大規模な改造=享保改革を断行した。この結果、日本型社会・日本型システムが確立し、社会は大きく合理化・文明化した。吉宗の発した言葉を直接・間接に集め、彼の実像と改革の歴史的意義に迫る。
目次
日本社会の未来像は享保改革の検討から
1 異色の経歴
2 「革命」政権の成立
3 享保改革―「大きな政府」
4 財政再建と官僚システム
5 尾張宗春との対決
6 増税の強行
7 引退後の生活
著者等紹介
大石学[オオイシマナブ]
1953年生まれ。筑波大学大学院博士課程単位取得。専攻は日本近世史。現在、東京学芸大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しごろ
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江戸幕府八代将軍徳川吉宗が、徳川宗家以外からはじめて将軍になったとき、社会は低成長期にあり、政治の停滞、財政悪化、災害・疫病の発生など厳しい局面を迎えていた。その状況を打開するため、吉宗は、二九年にわたり強力なリーダーシップを発揮し、国家と社会の大規模な改造=享保改革を断行した。この結果、日本型社会・日本型システムが確立し、社会は大きく合理化・文明化した。吉宗の発した言葉を直接・間接に集め、彼の実像と改革の歴史的意義に迫る。2017/12/13
有智 麻耶
0
レポートの基礎資料。江戸幕府8代将軍、徳川吉宗の簡潔な伝記。吉宗は「高負担・高福祉」の「大きな政府」を目指し、享保改革を行ったということらしい。歴史の知識がほぼゼロなので、先入観なく素直に読めた。ただ、吉宗を「日本社会の文明化を進めた将軍」と評するのは、何となくずれている気がする。2017/01/05
うさを
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徳川吉宗の短く簡便な解説書。さっと読めてしまうが、物足りなさは残る。3代家光の系統が7代家継で途絶えると、御三家の紀州徳川家から初代家康の曽孫として将軍職に就き、長期政権を敷く。そこで様々な改革を実行したが、それが江戸後期の幕政の礎になっていく。しかし、吉宗のライフヒストリーは、確かにドラマチックだ。読みながら、『暴れん坊将軍』のキャラクター造形の元ネタを想像したり、配役を大河の『八代将軍吉宗』で想像したりした。2013/04/30
キングトータス
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吉宗については大河での加納久通や有馬氏倫との掛け合いを思い出すが、実像を知りたくなり読む。子供のころ鍔を箱ごと貰い、部下に与えたエピソードは吉宗が天性の指導者であることがわかる。享保の改革によって官僚機構整備、増税、質素倹約推奨など国民支配が強化された。一方で教育振興、貧困者救済、公園解放なども行っており国民を縛るだけの政策ではない。吉宗の目指した大きな政府は現在の発展方向とは異なるが、ここ数十年「日本型システム」の見直しを進めた結果、迷走を続けている事を考えると、吉宗について再度学ぶ必要があるといえる。