内容説明
アジア太平洋戦争は、日本が初めて推進する総力戦であった。総力戦とは、国家の総力(軍事力・経済力・精神力)をあげた戦争のことである。経済力については、軍需生産を拡大させることを目的に、徹底した統制経済が推し進められた。しかし、これまでの研究では、統制経済の重要な一環をなす労働の統制、すなわち国家による労働力動員政策については、ほとんど顧みられることはなかった。また、朝鮮人・中国人強制連行については、戦時期の歴史上の一齣(ひとこま)としてとらえられてきたように思われる。こうした状況をふまえて、戦時期の労働統制政策について、労働力動員政策と強制連行政策を中心に検討する。
目次
総力戦としてのアジア太平洋戦争
1 労働力動員(労務動員計画の作成;小学校(国民学校)・中等学校新卒者
学校在学者
農民・農村民
中工商工業者
女性
供給源別動員数)
2 朝鮮人強制連行(朝鮮人強制連行政策の成立;官斡旋による強制連行政策;「移入」朝鮮人の出身道と職業・年齢;「移入」朝鮮人の人数とその産業別構成;「移入」朝鮮人の企業別構成;皇民化政策;労務管理政策と賃金;逃亡;労働争議)
3 中国人強制連行(中国人強制連行政策の成立;中国人強制連行の組織;出身地・年齢と「前歴」;「移入」中国人の産業別・企業別構成;抑圧的・暴力的労務管理;賃金/劣悪な生活状態;死亡と疾病)
4 「動員と強制連行」の破錠―「帝国」と日本の敗戦へ(労働力動員の破錠;朝鮮人強制連行体制の崩壊;中国人強制連行体制の動揺)
著者等紹介
西成田豊[ニシナリタユタカ]
1948年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科博士課程。専攻、近現代日本経済史。現在、一橋大学大学院経済学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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