内容説明
古代・中世の貴族や武士は、天皇をどのような存在とみなしていたのでしょうか。また、天皇自身は、どのような存在でありたいと考えていたのでしょうか。古代・中世の政治的事件のほとんどすべては、皇位継承問題が原因で起きたといっても過言ではありませんが、その背景にはこの時代の独特の天皇観がありました。その特徴はどこにあるのか、我々現代人の天皇観と対比しながら探ってみましょう。
目次
1 「万世一系」の天皇イメージ
2 『愚管抄』と『神皇正統記』
3 正統(ショウトウ)の理念
4 「正統」理念系図の見方
5 「神国」と天皇
6 皇位継承問題と天皇観
著者等紹介
河内祥輔[コウチショウスケ]
1943年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。専攻、日本中世史。現在、北海道大学大学院文学研究科教授
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感想・レビュー
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バルジ
3
愚管抄と神皇正統記から中世における天皇観を探る。中世においては現代の「万世一系」という意識はさほど無く、「正統」という観念が支配的であった。この正統観念によれば、皇統は一つの幹として続くこともあれば、天皇の代替わりによる皇統変更は従来の皇統が枝葉となり新たに即位した天皇の皇統が「正統」と認知される。また面白いのは「神は皇統を担保したが能力までは担保しない」という点。神も間違いを犯し時折「無能」な天皇が出現することもあるらしい。近代の絶対的な天皇像とはだいぶ様相を異にする。2021/09/05
kazuya
1
「愚管抄」および「神皇正統記」を主なテキストとしながら、中世の天皇観、特に「正統」についてまとめられている一冊。 「万世一系」との違いなど、分かりやすくまとまっている。2022/11/11
hr
1
承久の乱の勃発から経過の箇所が面白い。躊躇する武士達の背中を押したのが、大江広元と三善康信だったという話。これは納得できる。2018/06/16
akuragitatata
1
万系一世の発想が『神皇正統記』から始まる正統性と神意をめぐる議論の中で発想され、近代にいきなり「神意」がなくなって矮小化したという議論。大変勉強になった。慈円『愚管抄』についてもいろいろと示唆がある。義満についてのコラムが重要。尊号を拒否して院号を、という義満と院をめぐる議論について、裏と表を腑分けした上で、最近話題の話題についていち早く適切な指摘をしていますね。2017/06/15
Doraneko358
1
この本を高森先生がサピオで推薦されていたので読んでみたが、なるほど現代の天皇観とはまた違った議論が中世から江戸時代にかけて行われていたという事がよくわかる面白い内容であった。2017/01/31