内容説明
命をどのように考え、どのように扱うかは、それぞれの社会の文化と価値世界の根底に横たわる問題である。人はどのようにして病を癒し、命を守り、つないできたのか。もし、このような視点からみると、富(経済)と権力(政治)を中心としたこれまでの歴史とは、ちがった歴史が見えてこよう。東南アジアには、多くの病がもちこまれたが、同時にインド、中国、アラブ、ヨーロッパから、新たな癒し(医療)ももたらされた。新たな病と癒しとの遭遇は、人びとにとって、命の危機と救済・文化的葛藤の歴史でもあった。
目次
1 歴史の愉しみ
2 インドネシアの伝統的な癒しの世界
3 ヒンドゥー化と癒し
4 イスラム化と癒し
5 西欧医学との遭遇
6 西欧医学との葛藤
著者等紹介
大木昌[オオキアキラ]
1945年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了、オーストラリア国立大学博士課程修了。Ph.D.現在、明治学院大学国際学部教授
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感想・レビュー
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蛇の婿
4
興味深く読了。アジアがその発展に従い新世界から流入してくる新しい『癒し』の概念をどう受け入れてきたかがテーマです。…人間を筋肉とか内臓とかの組織の集合体と客観視する西欧医療が入ってきたときに、ほぼ抵抗なくそれを受け入れた日本人という民族は、アジアの中では実は凄く特異な民族であり、それゆえにこういうテーマは日本人にはなかなか気が付かないことなのではないでしょうか。たとえば2014年のエボラ出血熱の流行も、現地の人間が隔離した患者を親族が連れ出して他の村へ行くような行動も、単に文明水準が未開だから、という2015/04/26
司行方
2
前近代においては医療はプラシーボによるところが多く、外来の医療を受け入れることは、文化や世界を受け入れることでもあるという主張には納得した。インドネシアでは土着、ヒンドゥー、ムスリム、西欧と移り変わってきた。筆者の現代医療に批判的なところが気にかかる。2013/12/25
Wulan
1
社会統合論の授業用。やっぱdukunが気になる。2012/01/15