内容説明
世界の人口のうち13億人が帰属するイスラーム。広大な地域におよぶこの宗教は、唯一神への絶対帰依を説き、その教えは社会のすべての面におよぶという。その源流は開祖ムハンマドにあるが、彼の実像は日本人には縁遠い。現在も信徒たちは、彼を人生と社会の規範として仰ぎみる。その影響力の秘密はどこにあるのだろうか。ある時代を生きた一人の人間であるとともに、大きな思想現象として人類史に衝撃を与えたムハンマドの核心に迫る。
目次
1 家庭の人
2 啓示の器
3 神の使徒
4 戦いと裁定
5 ムハンマドの実像を求めて
6 人類史のなかのムハンマド
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
蛇の婿
12
イスラム教は私にはかなり馴染みの薄い宗教なのですが、この本はそんな私にも非常に解かり易い平易な文章で書かれていて好感がもてました。…因みにコーランがクルアーンと書かれているのはよりアラビア語に近い表記なのでしょうか。尤も、イスラム教、というか、イスラム教の開祖であるムハンマドについての本なので、宗教関連の哲学やらがあまり出てこないのも読みやすい理由なのでしょうけれどもw ややこしい研究書ではなく、イスラム教やムハンマドについてさらっと知識が欲しい方には最適の本かもしれませんw2014/06/11
みのくま
8
世界宗教において、開祖が明示的に自分の活動が新宗教であると言ったのはイスラームだけである。そして自らを「最後の預言者」として後続を絶った。ムハンマドはよほど優れた宗教家であり政治家であったのだ。だが他方、彼は啓示を受ける40歳まではひどく平凡な男であったらしい。このギャップは何を意味するのだろうか。残念ながら本書は何も教えてくれず、ムハンマドの事績とイスラームに対しての偏見の指摘に注力しており、イスラーム入門書には最適だがぼくには退屈だった。しかし本書が2002年上梓である事が関係しているのかもしれない。2019/09/21
ジュンジュン
2
宗教創始者としては新しい人(と言っても7世紀だが)なので、モーゼやイエスのように伝説に彩られた超人ではなく、歴史的偉人としてその生涯を追いかけることができる。だが、本書の真髄はその後の5,6章だろう。著者の研究者としての立場を明らかにし、「神の存在」や「啓示」をどのように考えるかなどは、真摯な姿勢にグッと引き込まれた。また、あとがきの献辞にちょっと目頭が熱くなった。2017/11/16