内容説明
「イスラームの知」とは、いったいどのようなものであろうか。イスラームの「知」はイスラームそのものに基づきながら、その外側からも多くを取り入れつつ、それをイスラームと融合させ、大きな「知」の体系へと発展させてきた文明の成果である。本書では、そのような「知」が、誰によって、どのようにして受け継がれ、発展・展開されてきたかに焦点を当てる。
目次
前近代イスラーム社会における知
1 イスラームと「知識」
2 知の領域の拡大と発展
3 知を伝える人・学ぶ人
4 知の伝達の場と方法
著者等紹介
湯川武[ユカワタケシ]
1941年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程修了。専攻、中東イスラーム史。現在、早稲田大学イスラーム地域研究機構教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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サアベドラ
9
イスラーム文明における「知」の在り方を扱う。神の言葉たるクルアーンの結集と解釈から始まったイスラームの知的探求は、ギリシアやインドの諸学を取り込みながら深化と拡大を続け、マドラサ制度と4大法学派の成立で一応の完成を見る。マドラサを拠点とする学問ネットワークは中世ヨーロッパの大学制度と一見するとよく似ているが、後者が「どこで」学んだかを重視するのに対し、前者は「誰に」学んだかを重視するところに大きな違いがある。これは、知識の正確な伝達を何より大切にするという考え方がイスラームの学問の根っこにあるからである。2012/12/17
ああああ
6
聖職者階級が無い。聖職者の集団としての権力が(比較的)無いイスラム教。と、すると教義や知識をどのように伝達したのかということは面白い。世界的な宗教となるなかで「慣習」と「知」と「聖典の解釈」が不可分に教育されていく。それは宗教の教義をこえた人類にとっての大きなライブラリーでもあるのでは…などと妄想してしまった。 2015/06/14
未来来
2
タイトル通り、イスラームにおける知とその伝達に関する変遷を追っています。イスラームでは知識を財産と考える教義があり、教え学ぶ事が続けられています。どのような人から人々は教わっていたのか、教師と弟子の関係はどのようなものだったのか、どのような場所で学んでいたのかがわかり易く解説されていました。また、イスラームでは異文化圏との交流によりそれまで無かった知識も取り込んでいく様も描かれています。イスラームの教育を中心とし、教義や生活はあくまで背景というのが新鮮。まとめが尻切れ気味な点は残念。《大学図書館》2009/11/13
sovereigncountr
1
近世以前のイスラームの学知とウラマーの活動を中心に関連する話題を網羅的に紹介した入門書。イスラーム社会を考える上で非常に良い入門書となっている。2023/09/20
Nakako Hamamoto
0
現在、世界史を教えていて、生徒がすごく興味をしめしてくれるのが、イスラーム史。特に意外な点が、彼らの「寛容さ」である。寛容さや柔軟さがなければ、何事も成長はない。様々な文明が融合されて発展していく様から、学ぶ点が山ほどある。2017/02/26