内容説明
ソ連という「社会主義国家」があった。新聞などでは文脈に関係なく「旧」をつけられている、あの国だ。ソ連は約七〇年にわたり存在し、世界に大きな影響を及ぼした。その事実は、社会主義が魅力を失い、ソ連という国自体が消滅しても、消えることはない。ならば、この国について、忘却にまかせるのではなく理解を深めるほうがよいのではないだろうか。歴史のなかの存在となった今、ソ連とはどのような国であったのか、考えつつ記したのが本書である。
目次
20世紀におけるソ連
「社会主義国家」建設の苦難
第二次世界大戦後の世界とソ連
「アメリカ合衆国に追いつき、追いこす」
「安定」から「停滞」へ
冷戦の集結とソ連の解体
著者等紹介
松戸清裕[マツドキヨヒロ]
1967年生まれ。東京大学文学部卒業。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位修得退学。専攻、ソ連史。北海学園大学法学部助教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nnpusnsn1945
54
著者の『ソ連史』が大変面白かったのでよんだ。ページ数は少なく、冷戦期の記述が多いため、ソ連の歴史を大まかに見るにはやや物足りないが、うまくまとまっている。写真や宣伝ポスターも入れられていて、当時の様相を想像しやすい。ソ連が大国となった理由は、ガスや石油といった資源が豊富であったことらしい。2021/09/15
ちゅんさん
51
今のロシアを知るにはやはりソ連のことを知らなければと思い手に取った。短いが簡潔によくまとまっており読みやすい。ソ連史の大まかな流れを掴むにはよい、良書です。2022/04/12
崩紫サロメ
18
フルシチョフ、ブレジネフ、ゴルバチョフ時代をコンパクトに扱ったもの。今時そんな人も減ったかと思うがソ連の過ちをすべてスターリンに押しつけようとする見方はきちんと否定し、むしろそれ自体がフルシチョフの方針であったと指摘している。しかし彼の新路線が国家が面倒を見てくれる、という「暗黙の社会契約」を産み、ソ連経済は衰退していく。WW2後のソ連史入門として読みやすい。2019/12/20
新田新一
14
スターリン後の指導者の政策を通して、ソ連の政治の成果と失敗を描いた一冊。学校の歴史の時間では省略されがちな時代のことが詳細に描かれており、非常に良かったです。この本を読むとソ連では社会主義の浸透によって、一定の成果があったことが分かります。国家の計画的な経済により貧困がほぼなくなり、普通の人は安定した生活を送れるようになりました。ただ国が面倒を見てくれるので、国民が無気力になった弊害はあります。社会主義を闇雲に攻撃するのではなく、社会主義から学べることを無視してはいけない、と思います。2024/04/21
Toska
10
再読。庶民ではなく指導者の目線で、しかも等身大のソ連史を描き出すというありそうでなかった試み。少なくともフルシチョフ以降のリーダーたちは、為政者としてはまともな感性の持ち主で、誠意もやる気もあった。ただ、「失政は政治の本質」という例の名言が浮かんできてしまうのは避けられない。現代ロシアが農産品の輸出国として存在感を示しているのを見るにつけ、ソヴィエト農業のあのグダグダっぷりは何だったのかという…2023/10/18