内容説明
十九世紀以降に理想とされてきた女と男と子どもの関係は、それ以前から形づくられてきたマンタリテ(人間の感じ考えるその仕方)や、ソシアビリテ(社会的結合関係)に、すでにその萌芽が埋め込まれていた。人が家族のうちに求める親密性や、社会における公私の境界が、それに先立つ数百年のあいだに、徐々に再編成されつつあったからである。本書では、十六~十八世紀の、とくにフランスで見られた変化に光をあてながら、近代社会を再考していく。
目次
女と男と子どもの関係史
1 グーテンベルク以降の表象世界
2 生きられた空間
3 識字率の向上と性差
4 親密性の変容と政治空間の再編
著者等紹介
長谷川まゆ帆[ハセガワマユホ]
1957年生まれ。名古屋大学文学部卒業。名古屋大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専攻、フランス近世社会史。現在、東京大学大学院総合文化研究科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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シロクマぽよんぽ
4
近代フランスにおける女性性と子ども観の変化をまとめた一冊。女性は家・戸という単位に内包され、個人として認識されていなかった。そのため、政治参加や教育の対象外だった。さらに子どもの発見により、女性は家族空間に緊縛されることになる。婚姻制度や女性の社会進出の実現がどれだけ難しかったのか、よく理解できた。メディア、経済、政治システムの変化など、ジェンダー観も社会変化の影響が大きいんだなと思った。2022/01/14
sovereigncountr
1
本書は、女性史(この場合ジェンダー史ではないと考える)的な視点から、近世フランスの社会史上のトピックを総浚いしている。記述にまとまりを欠くが、論点を押さえることができる。2024/04/22
Omata Junichi
1
「男の歴史」を描いても「女の歴史」を描くことにはならないけど、「女の歴史」を描くと「男の歴史」も同時に描かれる、というのが短い文章のなかだけでもよくわかる。良妻賢母的な思想が基本的には近代ヨーロッパの産物なのだとしても、それがある種の普遍的な観念としてグローバルに広がっているように思えるのは、日本の「三従の教え」みたいな地域のそれに似た観念に接続されたから、ということなのでしょうか。「子どもの歴史」については、「小さな大人」としての言及程度なので、端的に描写するのはまだまだ難しいということなのかな、とも。2020/11/04
こずえ
0
ジェンダーとか子どもの権利とかそういったものを歴史的にとらえるには良い。が、これ1冊では不十分なのでジェンダー論など詳しく書かれた本を次によむことは必要
どんとこい
0
題名に著者のスタンスが表れてるが、読みやすい導入書ではある。2012/01/19