内容説明
カーストは、インドの不可分の属性としてとらえられている。それは、差別的な制度であるという漠然としたイメージのもとで語られるのだが、いざ詳しく調べようとして専門書を紐解くと、そこでは、時としてまったく相容れない大量の論議がたたかわされていることに気づかされる。こうした状況は、決して偶然に生じたものではない。むしろ、その錯綜を解きほぐす作業のなかにこそ、インド史上の問題を解明する手がかりが潜んでいるのである。
目次
歴史のなかでカーストを考える
1 カーストとはなにか
2 カーストの歴史
3 植民地支配とカースト
4 現代インドとカースト
著者等紹介
藤井毅[フジイタケシ]
1955年生まれ。東京外国語大学外国語学部卒業。東京外国語大学大学院外国語学研究科修士課程修了。専攻、南アジア近現代史。現在、東京外国語大学外国語学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ふぁきべ
9
ほかの本でインドのカーストについて出てきたが、今一つきっちりとした知識を持っていないと思ったので、基礎的で手軽に読めることを期待して本書を手にしたが、初心者向きの内容ではなかった。インドについてのそれなりの知識がないと難しいのでは。ただ、カーストは概念としてポルトガル、そしてイギリスが本格的に整備したもので、私が思っていたような古くからインドに根付いていたものではなく、ジャーティやヴァルナでもないということが理解できたのはよかった。2020/08/13
じゃくお
4
カーストという概念はヨーロッパがインドへ進出してから発生したものであり、その意味は現在までも定義することが難しい。私はカースト=ヴァルナ(不可触民を含む)だと考えていたが、カーストはヴァルナでもジャーティでもない。純粋なヒンドゥーにおいてはヴァルナは分業体制であり、カーストと同じものとは言えないのである。そのため、ヒンドゥー社会であるインドでは被差別民への保護政策が主要となっている。そもそも、カーストの厳密な定義を知ることはあまりに困難である。簡単な読書では理解が誤ってしまう。カースト問題は深淵なものだ。2019/10/12
じょあん
3
ヴァルナ、ジャーティーとカーストは別のものという。カーストの語はポルトガル人の来航に由来。それ以前に当てはめることはできないという。以来、外部勢力のインドでの支配権浸透につれ、ヨーロッパ人の統治の便宜のためのカースト概念にインドの現実が近づいていく実態があったようだ。しっかり理解するまでに読み返す必要がありそう。2023/06/28
Tenouji
3
カーストについて詳しく知らなかったので読んでみた。昔懐かしの山川出版。ちょっといきなり詳細すぎて難しい。2015/03/29
可兒
2
そもそもカーストという言葉がインド発祥でないとか、カーストが空間的分業や統合意識を実現している現状とその悪影響とか、ある程度ムダ知識をもってから読むと、また別の視点で考えさせられる2010/07/29