内容説明
帝国主義とはなにか。かつてそれは十九世紀末から二十世紀前半の植民地獲得競争やそれをめぐる世界戦争をさした。今われわれはそれを十七世紀から今日まで続く資本主義の「世界システム」の中で見直そうとする。かつて帝国主義といえば資本輸出や独占資本主義を思いうかべた。われわれはむしろ人や物の移動による世界の一体化、それに伴うナショナリズムや人種差別によって広がった民族間の対立、人の心の亀裂の深さに注目する。
目次
帝国主義とはなにか
1 多彩な帝国主義理論
2 パラダイムの転換
3 グローバリゼーション
4 労働力の大移動
5 支配・差別・排除
6 ヨーロッパの分裂と「周辺」民族主義のめざめ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
(haro-n)
34
帝国主義は、海外への植民地活動が盛んになり国民国家の形成とあいまって覇権争いをしていく18~20世紀始めの情勢を言うのかと思っていたが、16~20世紀末までのかなり長い期間を指すことがわかった。「従属理論」やマグドフの「帝国主義論」、ウォーラーステインの「世界システム論」の概要が説明されており、帝国主義の内容を整理できた。白人の有色人種への差別や南北格差など、現代にまで有色人種に忘れられない心の傷を残していることを問題視している。W.E.D.デュボイスの言葉が重い。国民国家と共に押さえたい分かり易い内容。
venturingbeyond
22
引き続き、歴史総合の教材作成のヒントにと読了。四半世紀前の著作ながら、参考になるところ大。帝国主義をめぐる学説史を概観し、交通網の整備、グローバルな労働力移動、中心と周縁の支配・被支配の関係を固定化するイデオロギーとしての社会的ダーウィニズムや優生学、二度の大戦における植民地の人々の動員とその後のナショナリズム高揚への影響について、基本的な視座がコンパクトに示されている。今年の授業では、概ねこれに沿った構図で生徒に帝国主義の時代の世界システムの実態を考えさせようかな。2022/04/19
水無月十六(ニール・フィレル)
3
大学の課題として購入、読書。世界システム論、帝国主義についてまとめられた本。世界を見るにあたって、この考え方は重要であるように思える。世界の出来事は自分には関係ない。その考えは捨てねばなるまい。2015/02/13
kapo54
2
コンパクトにまとまっているが内容は充実している。2014/11/02
ヨシオ・ペンギン
1
虐げられてきた黒人が、インド人クーリーを虐げるなど、現在の人種差別とつながっているんだなと実感。2021/03/25