出版社内容情報
御厨貴氏(東京大学)、推薦! 政治学のプリンスによる気鋭の論考がついに刊行!
何がリアルなのか? ぼくらは何によって生を実感できるのか?
今も昔も、若者に常に課せられた問いに著者はまっすぐと逃げることなく向き合う。
著者が試みるのは、60年代の若者たちの行動や思想を、「若者」という視点から描くことである。
「リアル」という根本的な問題意識を軸にして、60年代の世相を読み解きながら、
現代の若者のあり方、これからの政治のあり方を逆照射する。
それは執筆当時大学生/大学院生であった著者が、過去の若者と現代の若者とをつなぐ
「リアル」という回路を開く試みでもあった。
本書の第Ⅰ部は、著者が東京大学法学部在学中に、『毎日新聞』紙上に9ヶ月間にわたって連載された
「60年代のリアル」がもとになっている。主として題材とされるのは60年安保闘争と60年代末の学園(大学)
闘争であるが、著者は「リアル」という側面に着目することで、小熊英二著『1968』に代表されるような
従来の60年代論とはまったくちがう「肉体感覚」という概念によって大衆・学生運動を捉え直した。
「肉体感覚」を刺激するものとしての「痛み」、それを求める「若さ」と、それが不可避的に持つ「焦り」、
そして「死」への願望・・・それらがいかにして60年代の若者の「アツさ」を生み出していったのか。
そうした経緯が、64年の東京オリンピックが象徴するような高度経済成長下での社会変革と連関されて描かれ、
現代人にとっては理解しがたい彼らの「アツさ」が説明されることになる。
さらに著者は第Ⅱ部で、60年代の若者をみるなかで発見された若者特有の「リアル」や「肉体感覚」や「皮膚」、
さらには「ジャズ」的なつながりといったようなモチーフを用いて、現代社会の特質をも明らかにしようと試みる。
そこで俎上に載せられるのは、『エヴァンゲリオン』や『攻殻機動隊』など、これまで宮台真司氏、東浩紀氏ら
社会評論家たちがその分析対象としてきたアニメであるが、著者はその60年代との接続を意識することで、インターネットと社会とのつながりについてまったく新しい視覚を提示する。そこで強調されるのは、インターネットが肉体感覚を喪失させる一方で、その「ざわめき」を非肉体的な社会構成要素のなかに生み出す可能性を胚胎させていたということである。
以上のような分析をもとにして、最後に著者は、その専門分野である政治における可能性に言及する。
「公」とはわれわれにざわめきを与えるものとして再編成され、それに伴って「公」を扱うものとしての
政治の姿も再編成を余儀なくされるというのである。著者のいう「リアルな政治」とは、「肉体感覚」や「皮膚感覚」を持った政治であり、著者はそれが政治的無関心で溢れた日本政治の現状を改善しうると主張している。
著者の処方箋である、国民が政治家という「個人」に「委託」することで責任意識をもって政治に「所属」すべきとする見方は、これまでの政治学者たちが主張してきた「政策」ないしマニフェストを重視するイギリス型の政治像とはまったく相反するものであることも注目される。
かくして、本書はこれまでになかった60年代論であると同時に、新たなアニメ評論、社会評論でもあり、
これからの政治像をも描く、画期的な著作である。
目次
第1部 60年代のリアル(若者たちの60年代;60年安保闘争;変わりゆく60年代;大学紛争から70年代へ)
第2部 10年代のリアル(皮膚に映る若さ;60年代は遠いか;ぼくらの10年代;リアルな政治の誕生?)
感想・レビュー
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かんがく
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