内容説明
アメリカは他の世界、とりわけヨーロッパからどのように見られているのか。そしてそうしたアメリカ観を生み出した起源はどこにあるのか。本書では、近現代思想におけるアメリカというシンボルを、様々な思想家の言説をもとに縦横に探る。
目次
アメリカを奪還せよ
退化としてのアメリカ
退化論へのアメリカ側の反応
フランスに映ったアメリカ―二つの革命
人種的シンボルとしてのアメリカ―アルチュール・ド・ゴビノーの「新しい歴史」
人種学から多文化主義へ
人種理論対政治学―トクヴィル=ゴビノー論争
アメリカからアメリカナイゼーションへ―ドイツ思想におけるアメリカ像
破局の地―マルティン・ハイデガーのアメリカ
歴史の終わりとしてのアメリカ
ポストモダンとしてのアメリカ
真のアメリカへ
著者等紹介
村田晃嗣[ムラタコウジ]
1964年生まれ。神戸大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(政治学)。現在、同志社大学法学部教授
伊藤豊[イトウユタカ]
1967年生まれ。ラトガーズ大学大学院博士課程修了。Ph.D.(アメリカ文化史)。現在、山形大学人文学部准教授
長谷川一年[ハセガワカズトシ]
1970年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(政治学)。現在、島根大学法文学部准教授
竹島博之[タケシマヒロユキ]
1972年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(政治学)。現在、福岡教育大学教育学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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メルセ・ひすい
4
13-131 赤77 ★5 反アメリカニズムの系譜を辿る著者の探究は米国と言う鏡に映し出された近代西洋精神史となっており、その点だけでも一読すべき価値を持つ重厚な研究である。また政治学の復興を唱える議論はポスト形而上学や文芸批評の手法が広く浸透している現代の政治学を、原点に立ち返って再度見直すきっかけを与える。また過去の偉大な思想家が米国をどのように捉えていたか、また彼らの米国像と今の我々の認識との比較をも写し出す。近現代思想における米国というシンボルを、様々な思想家の言説をもとに縦横に探る金字塔?2010/09/02
うにもろこし
2
多文化主義者や歴史主義者などによる米国批判論を網羅しそれに対する政治学の観点からの反論の書。前半においては生物学的な退化論や人種主義を含む多文化主義、後半においては主に歴史主義の視点からの反米論を紹介し反論していく。とにかく哲学だの生物学だの社会学だの歴史学だのに政治学が従属してはいけないという立場。おそらく決定論の否定が一つのテーマかと。生物学については今時ないにしても多文化主義への批判は痛烈。ハイデガーへの反論が同じ系譜とみなされたコジューブへの反論という間接的な形となっているところが残念か。2015/02/22
kohaku
1
18世紀から現代まで続くヨーロッパ(主にフランスとドイツ)の反米思想とそれらへの米国側の反発や同調の歴史をたどっている。現在は忘れられているが、18世紀後半には大きな影響力を持った思想家コルネリウス・ド・ポーの現在からみれば奇矯で差別的な反米思想の紹介は興味深かった。A・ハミルトンの『ザ・フェデラリスト』での反論が紹介されている。著者の「建国の父」たちへの強~いシンパシーやポストモダン思想家への皮肉っぽい攻撃など、熱気を感じさせる本。原著は1997年刊行。2013/09/25