戦争ストレスと神経症

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  • サイズ A5判/ページ数 378,/高さ 22cm
  • 商品コード 9784622071167
  • NDC分類 493.74
  • Cコード C3011

出版社内容情報

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〈戦争神経症の歴史は、精神科医と一般公衆との移り気に翻弄されてきた歴史である。第一次大戦直後の非常な関心はまもなく腰砕けになってしまった。平和時の神経症と違って、戦争神経症の研究は断続的で、それも気のない研究が多い。研究はバラバラに行われ、そのために手ひどい混乱が起こっている。…戦争のストレスによる症候群は一つしかない。…たしかに戦時特有の障害も多く、それは軍事精神医学の対象とするのが適当であるが、戦争神経症はそうではない。あらゆる社会のあらゆる人間に共通な性格と神経症とが戦争という強烈なストレス下に、非常に多くのヴァリエーションを生み出す。このことは臨床上も学問的にも重要である。…本書は戦争に特有の一症候群の研究を行おうとする。それは外傷神経症、シェルショック、戦闘消耗と同一のものである。すべて、戦争のストレスに続発する共通の後天的障害である〉

J・ハーマンが『心的外傷と回復』で何度も参照するなど、PTSD概念の礎石を築いた本書(初版1941、第二版1947)は、戦争神経症への専門家の座右の書であるばかりか、PTSDとは何か、さらには戦争の惨禍が何をもたらすのかを考えるための、類例のない書である。第一次世界大戦を主に扱いながら、現在のイラク戦争や自衛隊派遣など、危急の問題にも対応できる基本文献である。著者の「戦争の外傷神経症」(1959)を付録とし、併せて中井久夫による「訳語について」等を巻末に付した。


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関連書:
ハーマン『心的外傷と回復』
ヤング『PTSDの医療人類学』
パトナム『解離』
中井久夫『徴候・記憶・外傷』

内容説明

PTSDとは何か。戦争の惨禍は何をもたらすのか。40を超える症例と分析を通して戦争による外傷神経症等をはじめて描き、PTSD概念の礎石をきずいたパイオニア的著作。

目次

兵士と兵役
戦場精神医学
急性期
急性期の治療
慢性期の症状学
症状の分析
効果的な自我の発達
精神力動
慢性段階の治療
経過、予後、鑑別診断
法的問題点
付録 戦争の外傷神経症(一九五九年)

著者等紹介

カーディナー,エイブラム[カーディナー,エイブラム][Kardiner,Abram]
1891年ニューヨーク生まれ。コーネル大学医学部卒業後、精神分析学・精神医学・文化人類学の研究に従事。1921年にはウィーンに渡りフロイトの教育分析を受け、その後フロイトはじめ、アブラハム、フェレンツィ、ハンス・ザックス、ローヘイムの講義などに出席、帰国後ニューヨーク市ブロンクス区の第81合衆国復員軍人病院外来のattending spicialistとなり、戦争神経症患者を3年間診察。本書の臨床的基盤となる。他方で文化人類学のセミナーを長くつづけた。その後コロンビア大学、エモリー大学教授を歴任した。1981年没

中井久夫[ナカイヒサオ]
神戸大学名誉教授

加藤寛[カトウヒロシ]
兵庫県こころのケアセンター研究部長。精神科医
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。