出版社内容情報
『終末期医療を考えるために』の応用編。様々な判例などを取り上げながら安楽死の在り方を考える。
内容説明
「温室に並べられた鉢植え植物のようには生きたくない」と言っていた認知症の女性。その女性を主治医が安楽死させ、これがオランダで安楽死法成立後、初めて医師が訴追される案件となった。女性はこうなったら自分の命を終わりにしてほしいという医師への「事前意思表示書」を書いていた。医師はこの表示書に従った―にもかかわらず、検察はなぜ医師を訴追したのか。最高裁判所はなぜこの医師を無罪としたのか。現地取材を含め資料を丁寧に追い、オランダ安楽死法の原理を明らかにする。既刊『終末期医療を考えるために』(丸善出版)の姉妹編。
目次
プロローグ
1 オランダ認知症患者安楽死裁判(安楽死審査委員会裁定;ハーグ地方裁判所判決;検察庁上訴;最高裁判所判決)
2 認知症患者安楽死裁判の批判的考察―問題の所在と展開(事前意思表示書か「いま」の意思か;死ぬ権利―ビジネスとしての安楽死・ドイツ;持続的な深いセデーション(CDS)―ソフトな安楽死・フランス)
エピローグ
3 資料
著者等紹介
盛永審一郎[モリナガシンイチロウ]
富山大学名誉教授。1948年生まれ、東北大学大学院文学研究科博士課程中退。研究テーマは実存倫理学、応用倫理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たろーたん
2
母親も兄弟も認知症で、自分もそうなると恐れていた女性が、2012年にアルツハイマー型認知症と診断され、安楽死養成書に署名。2016年にはもはや認知症という言葉も理解できず、落ち着きがなく、混乱し、ヒステリックの様相。他患者への怒りと攻撃もあり、尿便失禁もしていた。この女性に本人に知らせず、睡眠導入剤のコーヒーを飲ませて、目が覚めた後も、家族が押さえつけながら、安楽死の注射。これが問題となるが、地裁でも最高裁でも「無罪」。認知症前の私が認知症後の私に影響を与えられるかというのは非常に微妙な問題だよね。2022/12/07