百年文庫

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  • サイズ B40判/ページ数 149p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591121870
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

幼時から許婚のような間柄である貞吉は、妙な絵ばかり描いている甲斐性のない男にみえた。お綾は貞吉に心を寄せながらも他家に嫁ぐ。貧しくとも、真心を尽くして生きた男の生涯(今東光『清貧の賦』)。世の明るさを一身に集めたような恋は突然、終わった。香気溢れる悲恋の調べ(北村透谷『星夜』)。戊辰戦争に敗れた会津藩士の子・荘十郎は、各地を転々としながら、姿の見えぬ「敵」に長刀をふりかざす(田宮虎彦『霧の中』)。激動期の日本、辛苦と哀しみに耐えつつ歩いた庶民の長い道のり。

著者等紹介

今東光[コントウコウ]
1898‐1977。横浜生まれ。第六次『新思潮』に参加し、新感覚派の作家として世に出た後、1930年僧籍に入って一次文学を離れたが、57年に『お吟さま』で直木賞を受賞。歯に衣着せぬ毒舌でも人気を博した

北村透谷[キタムラトウコク]
1868‐1894。小田原生まれ。本名・門太郎。早くから政治家を志して自由民権運動に参加。その後、政治を離れて文学に転じ、島崎藤村らに大きな影響を与えたが、25歳で自ら命を絶った。代表作に長詩『楚因之詩』、劇詩『蓬莱曲』など

田宮虎彦[タミヤトラヒコ]
1911‐1988。東京生まれ。東京帝国大学在学中から創作活動を行い、1936年「人民文庫」の創刊に参加。その後、さまざまな職を転々とし、47年の『霧の中』で注目され作家生活に入る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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モモ

48
今東光『清貧の賦』尊敬する大雅先生のもとで芸術の道を邁進する貞吉。先が見えない状況に許嫁の綾も去ってしまう。母だけが貞吉を見守るも貧しいまま。ついに諦めて本来の家業にもどり財を成す。北村透谷『星夜』文語体。でも恋が始まり、唐突に終わってしまった悲しみがひしひしと伝わる。25歳での死が惜しまれる。田宮虎彦『霧の中』戊辰戦争で両親と兄姉を殺され、縁のある人たちに育てられた荘十郎。かたきをとろうにも、本当の敵の正体は時代の流れなので、果たされない哀しさがただよう。濃い人生の一遍を見せられたような読後感でした。2022/11/19

臨床心理士 いるかくん

45
3人の作家の3篇の作品から成るアンソロジー。没落した酒蔵の息子、男の哀れ、会津出身者の流れてゆく人生。道を踏み外しても、踏み外したところに道はある。2015/01/26

けんさん

28
『人それぞれに歩むべき道があり、  人それぞれに歩んできた道がある』 書画の道を求めた末に…【清貧の賦】 恋は盲目、突然の別れ…【星夜】 見えない敵を追い求め…【霧の中】 ♪人生楽ありゃ苦もあるさ♪2022/10/21

19
百年文庫100冊読んで感想登録したと思ったら、2冊漏れてたので追加。今東光「清貧の賦」北村透谷「星夜」田宮虎彦「霧の中」の三篇。会津藩の剣士が太平洋戦争の終戦3日後亡くなるまでを描いた霧の中がよかった。透谷本人のように25歳で自死するにせよ、各地を放浪し見えない敵と戦い続けて老醜を晒そうとも、結局、自らの道を生きていくしかないんだなあという諦念にも似たものを感じる。2022/12/04

TSUBASA

19
偏屈な文人を師匠とあがめ、端から見れば愚にもつかぬ絵ばかり描く貞吉の、貧しいながらも芸術に生きた男の生涯、今東光『清貧の賦』。つよく想いを寄せるも空しく終わった恋、北村透谷『星夜』。戊辰戦争の亡霊たちの空しい戦い、田宮虎彦『霧の中』収録。客観的な文が多かったせいかどれもピンと来ないところが多かった。幸せに続くものであれ、不幸に続くものであれ、幻であれ、人は道しるべを頼りに生きていく。唯一ポジティブな意味での道しるべがあった『清貧の賦』が良かったか。2017/04/06

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