百年文庫

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  • サイズ B6判/ページ数 153p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591121795
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

東京の家が焼失し、家族と故郷に身を寄せる私は、自転車で町へ繰り出して酒を呑むのが唯一の愉しみ。終戦後のあてどない暮らしを飄々と描いた木山捷平『耳かき抄』。久助君の小学校に都会から太郎左衛門という古風な名の転校生がやってきた。目新しくて不可解な彼の言動に皆惑わされて…(新美南吉『嘘』)。九州山脈を望む入江の村。長年旧家に仕えて家畜の世話一筋の源吉爺さんが村に遺したものとは(中村地平『南方郵信』)。陽を浴びて土に汗し、ただ木訥に生きる。人間の営みと土地を見つめる三篇。

著者等紹介

木山捷平[キヤマショウヘイ]
1904‐1968。岡山県生まれ。東洋大学中退後、詩人として活動を始める。太宰治らと「海豹」を創刊以降、日常を飄逸と皮肉で捉えた私小説を発表。戦中の渡満体験をもとにした『大陸の細道』は、芸術選奨を受賞した

新美南吉[ニイミナンキチ]
1913‐1943。愛知県生まれ。本名・正八。10代で書いた『ごんぎつね』などが鈴木三重吉に認められ、児童文学の道へ。1942年、初の童話集『おじいさんのランプ』を刊行するが、29歳の若さで病没

中村地平[ナカムラチヘイ]
1908‐1963。宮崎市生まれ。本名・治兵衛。東京大学美学科在学中より井伏鱒二に師事。1932年に発表した小説『熱帯柳の種子』で新進作家として注目を集める。芥川賞候補作となった『南方郵信』ほか故郷九州を舞台にした小説・随筆を多く発表。戦後は宮崎県立図書館長を務めるなど地方文化の振興にも貢献した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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モモ

46
木山捷平『耳かき抄』異国で終戦を迎え備中で妻子と再会した私。東京に帰ろうにも家が焼けてしまい帰られない。町へ飲みに行く日々。最後はなんだか間抜け。新美南吉『嘘』横浜から来た転校生の太郎左衛門。都会的な太郎左衛門をみな一目置いていたが、嘘ばかりで次第に信頼を失う。そして最後の最後に見せた嘘のない姿にホッとする。新美南吉の優しさを感じる。中村地平『南方郵信』旧家に仕える源吉爺さん。時折、主人に怒られながらもマイペースな源吉爺さん。最期の様子が美しい。人の生死と自然の美しさ。なんとも良かった。素朴な人生の一冊。2022/10/29

臨床心理士 いるかくん

37
3人の作家の3篇の作品から成るアンソロジー。日常が突如として非日常と化す。あるいは、日常と非日常の繋ぎ目の無い連続性。2014/12/31

シュシュ

25
新美南吉を読みたくて、図書館でこの本を見つけた。『てぶくろ買いに』などの幼年童話と違って、この本の中の新美南吉の『嘘』は、高学年向きの面白い話だった。嘘つき扱いされる少年が出てくるが、最後の収まりがよくて読後感がよかった。この百年文庫シリーズを初めて読んだが、他のタイトルにも興味が湧いた。2017/09/06

TSUBASA

19
朴の木、ではなくて素朴とか純朴の「自然のまま」「すなお」といった意味の朴。終戦後地方に居着いてしまった私。耳かきを買いに外へ出ると結局酒だけ飲んで帰る私が体験した不気味な話、木山捷平『耳かき抄』。転校生の太郎左衛門は何かと嘘をつく。彼の嘘で家に帰れなくなった子供たちにかけた太郎の言葉は嘘か誠か、新美南吉『嘘』。田舎町に暮らす個性的な人々の生活、中村地平『南方郵信』収録。新美南吉がよかった。無邪気な嘘つきは何か利益を考えて嘘をつくわけじゃない。根っこは悪い奴じゃなければ、信じられる要素はあるはずなんですな。2016/09/26

16
中村地平「南方郵信」木山捷平「耳かき抄」新見南吉「嘘」の朴訥とした三篇。耳かき抄は家が戦争で焼けて、田舎でどうにかいきる男の楽しみは自転車で酒をのみに出かけること。朝ドラカムカムの安子ちゃんもこんくらい適当に生きれれば。ウッ。新見南吉の嘘がおたふくかぜで5日学校を休んでる間に、転校してきた嘘つきの少年が巻き起こす騒動。クジラはいなかったけど、ホントのことが一つあっただけでずいぶんと救われるのだ。2022/04/03

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