百年文庫

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  • サイズ B40判/ページ数 155p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591121696
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

「ではね、三人で分けっこしましょう」。育ち盛りの幼子を抱え、夫不在の家を必死に守ってきた桂子。母と妻、二つの女心を告白した鷹野つぎの『悲しき配分』。「寒菊や咲くべき場所に今年また」―根を下ろした植物のように一つの家を愛でて暮らす「わたし」の生活哲学(中里恒子『家の中』)。東京で気侭に学問をする栄一、地元で代用教員を務める辰男…瀬戸内海沿岸の旧家に生まれた六人兄弟は、「家」を起点にそれぞれの将来を思い描く(正宗白鳥『入江のほとり』)。積み重なる暮らしの中に人生を問う三篇。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

98
家をテーマにした三つの短編。どの物語も今の時代から取り残されたようなひっそりとした佇まいがある。文章がきめ細かで、ゆったりとした時間の流れている世界なので、読んでいてほっとした気持ちになった。鷹野つぎの「悲しき配分」は、母親の役割が家を守ることだった時代の物語。母の複雑な思いに切なさを感じた。中里恒子の「家の中」は、名作『時雨の記』に通じる内容。孤独に生きる女性の矜持がまぶしい。正宗白鳥の「入江のほとり」は、旧家の日本の兄弟姉妹の息のつまるような人間関係が描かれている。重厚で落ち着いた文体に魅力を感じた。2018/01/06

モモ

46
鷹野つぎ『悲しき配分』夫が単身赴任で、一人で二人の幼い子を育てる桂子。夫は帰ると夜中でも子どもを起こしプレゼントの服を着させる…。思いを逡巡させる桂子の様子が少しせつない。中里恒子『家の中』百年文庫では珍しくエッセイのよう。家にいることが多い私の、家の中のあれこれへの思い。家の中はいるものだけでさっぱりさせ、今使わないものは物置にしまう。物置には私の思い出がつまっている。正宗白鳥『入江のほとり』瀬戸内海沿岸を舞台に、6人兄弟それぞれの将来への恐れと憧れ。朝ではなく、夕暮れ時に考え込む感じの話の数々でした。2022/08/12

臨床心理士 いるかくん

39
3人の作家の3篇から成るアンソロジー。こんなはずじゃなかった。では、どんな人生ならよかったのかはわからない。2014/12/16

TSUBASA

22
長らく単身赴任だった夫が戻ってくる。子供たちは期待で胸を膨らませるが、一方で妻である桂子は子供たちを取られるような気分になる。鷹野つぎ『悲しき配分』。人生の夕暮れ時を迎え、自らのテリトリイである家から離れることがない「私」が語る生活哲学、中里恒子『家の中』。瀬戸内海の田舎に育った兄弟が巣立っていく中、地元に残っている辰男が本当に目指したいことは何なのか。正宗白鳥『入り江のほとり』収録。鷹野つぎが良かったかな。手間のかかる子供たちにはうんざりするだろうけど、世話ができるというのが親の楽しみなのかも知れない。2015/12/06

マッキー

19
『悲しき配分』は子育ての大変さや子供の愛らしさを感じ取れる。『家の中』は自分の考えと通じる部分があった。家って、いいですよね。最後の『入江のほとり』が子供たちの会話が楽しい。2017/10/04

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