百年文庫

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  • サイズ B40判/ページ数 145p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591121559
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

いつも子どものように扱われ、心に怒りの種を秘めている魔利。日常の小さな理不尽を独特の感性で描く森茉莉の快作『薔薇くい姫』。大輪の花五つ、咲きかけた桃色のつぼみが二つ。「私」をやさしく見守る、丘の上のばら園の思い出(片山廣子『ばらの花五つ』)。相場に手を出し、親戚に無心して暮らす父のもとを初恋の相手が訪ねてきた。悲しみの記憶から静かな情愛がたちのぼる、城夏子『つらつら椿』。女性作家が描く、花をめぐる物語三篇。

著者等紹介

森茉莉[モリマリ]
1903‐1987。東京・駒込千駄木町生まれ。森鴎外の長女で、16歳で結婚し二児をもうける。二度の離婚を経てから翻訳や随筆を手がけ、1957年『父の帽子』で日本エッセイスト・クラブ賞受賞。耽美的・幻想的な小説でも人気を博した

片山廣子[カタヤマヒロコ]
1878‐1957。東京・麻布生まれ。佐佐木信綱に師事し、歌人として活躍する一方、松村みね子の筆名で翻訳も行う

城夏子[ジョウナツコ]
1902‐1995。和歌山県生まれ。本名・福島静(しづか)。17歳から少女雑誌へ投稿し始め、編集助手をしながら小説を執筆。晩年は生き生きした老いを綴ったエッセイで、多くの人々の共感を呼んだ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

156
花曇りが続くなあ、と思っていたらとうとう雨が雪に変わっていたのでした。白いような透きとおる桃色のような花びらが夜の空気にとける満開の桜は、散ってしまうのだろうか、この雪のなかじっと耐えているのかしら。今年は少しさびしい桜の季節。 「巨勢山のつらつら椿つらつらに 見つつ偲ばな巨勢の春野を」葉桜の季節が過ぎれば汗ばむような陽気にとりどりの花が咲くだろう。隣の家の茉莉花、近くの野生のような薔薇は、なんという名前なのだろう、黄色がやわらかく美しい。思い浮かべて待ち望む。ほどければいい、蕾も世界も。2020/03/28

新地学@児童書病発動中

115
花をテーマにした三つの小説。どの作品も素晴らしい。森茉莉の「薔薇くい姫」がたまらなく好きだ。天衣無縫に生きる文豪の娘と世間の折り合いの悪さが、ユーモラスで耽美的な文体で描かれる。片山 廣子の「ばらの花五つ」は短いけれど深い余韻の残る作品。作者の凛とした生き方が伝わってきて、こちらの背筋を伸ばしたくなる。城夏子の「つらつら椿」は和歌を効果的に使った作品。不器用に生きた父に対する作者の哀惜の念に胸がいっぱいになる。作中でさり気なく描かれる椿が、鮮やかな映像となって脳裏に刻まれた。2017/04/16

モモ

53
森茉莉『薔薇くい姫』森鴎外の愛娘・茉莉。モオパッサンに魅了され翻訳したり、本を出版する素敵な女性なのに、茉莉いわく「莫迦に見える」ため、人に子どものように扱われ、怒りまくる様子が可笑しい。自分の健康を支える柿の葉がなくなり、代わりに葉が食べたいと薔薇の葉を食べる薔薇くい姫の茉莉。他の作品も久しぶりに読みたい。片山廣子『ばらの花五つ』小さい利益と小さい損失を積み重ね育ててゆく仕事。城夏子『つらつら椿』姉の出生を巡る我が家の秘密。家のお金を散財する父だが理解する娘。女性作家による様々な世界観が見られる一冊。2022/08/24

神太郎

35
「薔薇くい姫」は森鴎外の娘である茉莉の作品。大変愛でられて育ったがゆえに少し子供っぽいところもあり、「大丈夫かな?」と心配になる。自虐的にそこら辺を大いに上手く小説のネタとして描いてる。「ばらの花五つ」はとても短い。エッセイにも受け取れるが、日常的な感じが非常にグッド!最後の「つらつら椿」はこの中でも一番読みやすくてすんなりと入ってくるよい作品だ。父のもとを初恋の相手が訪ねてきて、自分の家族の秘密が明かされていく。和歌も効果的に使われていて美しい。女流作家ならではの柔らかさとしなやかさが良いアクセント!2020/03/25

マッキー

30
森茉莉に「薔薇くい姫」の瀟洒な文体と、鮮やかな色彩を感じられる名前の登場人物と、思わず「かわいい」と微笑んでしまいたくなる魔利の怒っている心情が読んでて楽しい。美しさもあるが、今まで読んだ中ではどちらかといえば独特な小説だった。2017/04/30

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