百年文庫

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  • サイズ B40判/ページ数 151p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591121436
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

早春の美しい朝、画家になることを決意したその日から、いくのの新しい人生が始まった。理想の生活をひたむきに追い求め、辿りついたあまりにも無垢で素朴な生(北原武夫『聖家族』)。酒場の匂い、群衆のざわめき…、故郷を捨て、アメリカでの人生を選んだ男の目に鮮やかに浮かんだ景色とは(ジョージ・ムーア『懐郷』)。結婚生活のほとんどを闘病に費やした妻と、彼女の死を看取った「私」。諦念、しかし希望を予兆させる強靭な魂の記録(藤枝静男『悲しいだけ』)。人生を生き抜こうとする者たちの強さが圧倒的な三篇。

著者等紹介

北原武夫[キタハラタケオ]
1907‐1973。小田原市生まれ、本名健男。慶應義塾大学在学中より、翻訳、文芸評論などを発表、都新聞入社後も創作活動を続ける。1936年、宇野千代と共に日本初のファッション誌「スタイル」を創刊、編集と経営に奔走した。38年発表の『妻』が芥川賞候補となる

ムーア,ジョージ[ムーア,ジョージ][Moore,George]
1852‐1933。アイルランドのメイヨー州に生まれる。画家をめざし、青年時代をパリで過ごした後、ロンドンで執筆活動に入る。自伝的小説『一青年の告白』や、社会の貧困を描いた『エスター・ウォーターズ』で文名を高める。外国作品の普及や、母国の文芸復興運動にも尽力した

藤枝静男[フジエダシズオ]
1908‐1993。静岡県生まれの作家、眼科医。本名勝見次郎。旧制八高時代の友人・平野謙と本多秋五に勧められ初の短篇『路』を執筆、結核を病む妻を描いた。代表作に『空気頭』(芸術選奨文部大臣賞)、『欣求浄土』、『愛国者たち』(平林たい子賞)、『田紳有楽』(谷崎潤一郎賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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モモ

46
北原武夫『聖家族』いくのは美しい朝の陽の光を眺め、教員をやめて画家になることに決める。本能のおもむくまま人生を生きる。夫と子をもち、さらに理想の生活になり、空に帰っていくように人生を終わらせる様子が何とも言えない。ジョージ・ムーア『懐郷』故郷アイルランドに帰り、孤独を深めるジェイムズ。婚約者を捨てアメリカに戻り、時を経て、かつての婚約者を懐かしむ身勝手な男。藤枝静男『悲しいだけ』長く闘病していた妻の死。『「妻の死が悲しいだけ」という感覚が塊となって、物質のように実際に存在している』という言葉が心に残った。2023/01/17

神太郎

34
「そら」なのか「くう(から)」なのか。なかなかに悩む感じだ。北原武夫「聖家族」は次第に世俗を超えた家族の話になっていき、なかなかぶっ飛んだ話へ展開されていく。ジョージ・ムーア「懐郷」はアイルランドへ行き、素朴な生活と愛する人を見つけたが、結局は輝かしい都会=アメリカへの思いを捨てきれず全てを捨てアメリカで幸せに暮らす男の話だった。しかし、老いて残るのはやはり故郷、そしてかつて愛した人だった。藤枝静男「かなしいだけ」は結核で亡くした奥さんの描写が痛ましく、読んでいてつらかった。2019/11/26

臨床心理士 いるかくん

26
3篇から成るアンソロジー。タイトルは空だが、上空の空というよりも、「空虚」という感じ。私が好きなフレーズは、ムーアの「懐郷」の中にある『あらゆる人間のなかに、当人のほかには誰も知らない、不変の、無言の生命がひそんでいる』である。2014/02/18

マッキー

20
北原武夫の「聖家族」、いくのの突飛で現実離れしている行動も、いくのが知り合った男との生活もあまり意味が理解できなかった。不自然というか、献身的すぎるというか・・・。モデルがいるのだろうか。あるいはオリジナルなんだろうか。2017/01/28

14
北原武夫「聖家族」家族ぐるみで裸の大将っぽいな…と思った。無垢なだけかもしんないけど、私にはできない生き方だなあ。そらではなくからだなと思っちゃった。ジョージ・ムーア「懐郷」藤枝静男「悲しいだけ」悲しいほどの愛情で妻の死を悼む一編。2021/07/22

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