百年文庫

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  • サイズ B6判/ページ数 149p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591119273
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

馬を追い野宿しながら暮らす孤独な少年イエーリにとって、幼なじみのマーラと交わした結婚の約束が何より心の支えだった―。純朴な若者がたどった過酷な運命の物語(ヴェルガ『羊飼イエーリ』)。毒ヘビに噛まれた男の一日を描いて鮮やかな印象を残す『流されて』(キロガ)。動物園の子熊に子どもが指を噛まれた―小さな「熊騒動」が大人たちの憎悪を呼び起こしていく。体面を繕いながら敵愾心を燃やす者たちの顛末(武田泰淳『動物』)。人間の傲慢さをくだく衝撃の三篇。

著者等紹介

ヴェルガ[ヴェルガ][Verga,Giovanni]
1840‐1922。イタリアの小説家、劇作家。シチリア島の貴族の家に生まれる。フィレンツェやミラノの文学サロンに出入りし、『山雀物語』『エーヴァ』などロマン主義的作品を発表するが、後に故郷を舞台にしたリアリズム小説を執筆

キロガ[キロガ][Quiroga,Horacio]
1878‐1937。ウルグアイの小説家。ポー、ルゴーネスの影響を受け、詩や小説を書くようになる。アルゼンチン北部の密林を舞台に『アナコンダ』『ジャングル物語』などを執筆し、ラテンアメリカの短篇小説を確立した

武田泰淳[タケダタイジュン]
1912‐1976。東京・本郷生まれ。魯迅など中国文学に造詣が深く、中日文化協会在職中に上海で敗戦を迎える。戦争体験をもとにした作品などで、戦後文学の代表的作家として活躍した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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モモ

61
ヴェロガ『羊飼イエーリ』馬の番人イエーリは幼い頃から実直に働いてきた。シチリア島の美しい自然に囲まれ純粋に成長したイエーリが愛するマーラと結婚するも…。最後はなんだか切ない。マーラも悪い女だ。キロガ『流されて』毒ヘビに噛まれた男の短い一日。武田泰淳『動物』動物園の子熊に南木氏の息子が指を噛まれる。それをきっかけに巻き起こる男たちの思惑。だが人喰い熊の出現で全ては無になる。人間の愚かな行為も自然に生きる動物の前では化けの皮がはがされ地に落ちるということなのだろうか。考えさせられる一冊だった。2020/09/05

風眠

56
自然というものの圧倒的な大きさに比べたら、人間とはなんと無力なものだろう。陳腐だけれど、そういう言葉しか思い浮かばない。地を這って生きる人間もまたその自然の一部だと言えるけれど、人間は感情を持つ生き物だから、自然のままに生きられず、じたばたし、抗い、迷い、苦しむ。自然のままに何事も受け入れ、諦めるという選択をすれば平和に生きられるのかもしれない。けれどこの地上にある命の中で、そうは簡単に自然淘汰されない命が人間というものなのかもしれない。私には三篇すべて難しかったが、自分のちっぽけさに茫洋としている読後。2019/02/22

神太郎

29
ヴェルガの「羊飼イエーリ」はひたすらにイエーリの純粋さに「騙さるんじゃあない!」と思いながらずっと読んでいた。羊飼い以外の事にも明るければあるいは…。キロガ「流されて」はあまり印象には残らず。ただ、過程を描く際に無駄がないのかさらりと書いているあたりはすごい。しかし味気はない。「動物」はなんというか、学者陣のやいのかいのがどうにもね…。いや足引っ張りあうよりもやることあるでしょ?とか思うんですが、人間敵愾心が出てしまうとやはりどんなに頭いい人でもダメになっちゃうんだねぇ…。2018/01/12

21
ヴェルガ「羊飼イエーリ」キロガ「流されて」武田泰淳「動物」の3編。武田泰淳は奥様の富士日記は何十回読み返したのか分からないのに、初読みで罪悪感。M家のペットの熊が逃げ出し人を襲いまくるが、学者や有力者たちは呑気に姑息に互いの足の引っ張り合い。おまえらwikiの三毛別羆事件を百回読み返せ。一番ダメな動物は人間だとの暗喩なのかな。森の描写は緻密なんだけど、百合子さんの「夫はせんべいが米からできると知らなかった」との日記の一節が思い起こされちゃってダメ。しかも熊は捕まらず、何の解決もなく話は終わるのであった。2021/03/07

TSUBASA

11
動物に、自然に、人々に親しむ純朴なる少年イエーリを待ち受けた恋の悲劇、ヴェルガ『羊飼イエーリ』。足を毒蛇に噛まれた男の必死の抵抗、キロガ『流されて』。餌のため人間を狡猾に襲う熊も、敵意を向ける人間も、打算無く人と付き合う人間も、みな同じ動物、武田泰淳『動物』収録。救いがあったと思うが最後には突き放されるようなキロガも良かったけども、泰淳が気に入りました。知恵を使おうとも本能のまま憤ろうとも同じ「動物」というカテゴリで捕えてみると一歩俯瞰した立場から見られる気がする。と言っている私も単なる動物なのですね。2013/09/04

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