百年文庫

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  • サイズ B6判/ページ数 197p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591119259
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

酒飲みの父親が四年ぶりに家に帰ってきた…。つましい庶民の暮らしを一幅の名画のように切り取って見せるフィリップの小さな話(『帰宅』ほか五篇)。甚七老人は縁側で煙草を吹かしながら、ふと墓参りを思い立つ。不思議な明るさに満ちた晩年の故郷の光景(坪田譲治『甚七南画風景』)。ペストが猛威を振るい村人たちが次々と世を去ったとき、森の中で生き抜いた子どもがいた―。祖父が教えてくれた忘れられない話(シュティフター『みかげ石』)。家や土地に刻まれた人の暮らしの物語。

著者等紹介

フィリップ[フィリップ][Philippe,Charles‐Louis]
1874‐1909。フランスの小説家。小さな町で木靴職人の子として生まれ、市役所勤めをしながら小説を執筆。『母と子』『小さな町で』など、庶民の暮らしの哀感を、感受性豊かな筆致で描いた作品を残している

坪田譲治[ツボタジョウジ]
1890‐1982。岡山県生まれ。小川未明、鈴木三重吉に師事。製織所の家業と並行して執筆を続け、46歳で発表した『風の中の子供』で、児童文学者としての地位を確立した

シュティフター[シュティフター][Stifter,Adalbert]
1805‐1868。オーストリアの作家。ウィーン大学に進学し、画家を志望するが、発表した短篇『コンドル』が好評で文筆活動に入る。人間を取り巻く自然の姿を、美しく描写した作品で知られる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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アン

78
家族を残し、家を出た男が四年振りに戻る。慎ましく暮らす家族の幸せと戸惑い『帰宅』フィリップ掌編6篇。甚七老人が孫と墓参りへ。甦る幼時の光景、夜に見た夢と安堵。見たい物が次々頭に浮かぶお爺さんの様はどこかコミカルだが、子供への眼差しが温かい『甚七南画風景』坪田譲治。ある不運からお仕置された孫を優しく祖父が散歩へ連れ出す。森での営みやペスト時代の奇跡の話を静かに語る『みかげ石』シュティフター。時が移ろうとも、みかげ石はその家で暮らす人々を見守り続けるだろう。家や土地に息づく人々の温もりに触れるような物語。 2024/03/28

はる

60
どれも味わい深いが、坪田譲治の「甚七南画風景」 が好み。自由で気まぐれなおじいさんと、現実的なおばあさんのやり取りが微笑ましい。牧歌的で明るいタッチだけれど、人生の終わりに近いおじいさんの心象は切ない。ラストの一文が秀逸。シュタィフターの「みかげ石」は、老人が孫の少年に語る、かつてこの地域で吹き荒れたペストの流行の記憶。多くの人が死んでしまう中、森の中で生き残った少年と少女がいた…。壮絶な過去の出来事と対照的な、穏やかな二人の時間。お祖父さんの温かな語り口がいい。2020/10/19

モモ

57
フィリップ『帰宅』四年ぶりに家に帰った男。当然受け入れてくれると思っていた家族は…。『老人の死』妻が死んで、家で自分一人と気づいた老人は…。その結末に夫婦の深い愛を感じた。坪田譲治『甚七南画風景』死が近いと感じた甚七が懐かしい風景を見て回る。長年連れ添った妻との言葉のやりとりが楽しい。シュティフター『みかげ石』祖父が話すペストが猛威を振るった時代の話。今のコロナにつながる。必ず病の終りはくると希望を感じた。深い森が多くあった頃のオーストリアの風景が目の前に広がるような表現が美しい。この本、とても良かった。2020/08/01

ぶんこ

51
3つの短編で「家」とありますが、建物の家ではなくて3つの家族の話でした。フィリップのは淡々としていて心に残ることもなく流れていく。坪田譲治のおじいさんは愛嬌があって読んでいるとホノボノ。シュティフターはペストが流行った頃の村の様子を孫に話してくれます。坊やへの話ですから悲惨な描写はないのが救い。森に逃げた一家の、子どもだけが生き残って彷徨う中で、同じように生き残った女の子を助ける。その女の子と後に結婚して幸せで立派な生涯をおくったというお話。どれも日常のひとこまで、読んでいると、その日常が通り過ぎた感じ。2020/12/12

神太郎

34
フィリップは百年文庫に珍しく短編6つも入っている。どれもポートレートのような作品が多い。表題作「帰宅」と「老人の死」がすきだった。『甚七南画風景』、おじいちゃんがパワフルでコミカル。もしかしたら今のご時世にこんなおじいちゃんがいたらちょっと嫌がられてしまうかもしれない。分からないけども。『みかげ石』はとにかく自然の描写がとてもうまい。シュティフタ―がもともと画家志望だったというのもあるのか、観察眼がずば抜けている。2017/11/12

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