百年文庫

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  • サイズ B6判/ページ数 139p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591119136
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

結婚を控えた男が友人と語りあううち、風邪で寝込む許婚者の容態が気になり始める。春の冷たい雨の中、家へと急ぐ男の不安は果てなく広がり…(夏目漱石『琴のそら音』)。芸者街から忽然と姿を消した名妓「きみ子」。激動の維新期に覚悟をもって生き抜いた女性の潔い愛の物語(ラフカディオ・ハーン『きみ子』)。初冬の月夜、人力車にのって坂をくだる病の子規が、人波とまばゆい明かりをつきぬけていく美しい瞬間(正岡子規『熊手と提灯』ほか三篇)。情趣深き文章世界。

著者等紹介

夏目漱石[ナツメソウセキ]
1867‐1916。江戸・牛込生まれ。本名は金之助。大学卒業後、教師生活や英国留学を経て、1905年に『吾輩は猫である』を発表。07年、東京朝日新聞社入社後、『夢十夜』『門』などが次々に同紙に掲載された

ハーン,ラフカディオ[ハーン,ラフカディオ][Hearn,Lafcadio]
1850‐1904。ギリシャ生まれの作家、批評家。イギリスとフランスで育ち、19歳でアメリカに渡る。新聞記者として長年活躍した後、1890年に来日、96年に帰化して小泉八雲に改名。その著作を通じて日本を世界に紹介した

正岡子規[マサオカシキ]
1867‐1902。伊予・松山生まれ。本名は常規(つねのり)。新聞「日本」や俳誌「ホトトギス」を舞台に、俳句や短歌の革新をおこなって、多くの俳人・歌人に影響を与えた。評論や随筆でもすぐれた作品を残している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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風眠

75
家々や路地の灯火。真っ黒い夜にぽわんと灯る明かりは、きっと人々の心にも作用しただろう。友人と「縁起悪いよ」的な話をしているうちに不安になり、婚約者のもとへ猛ダッシュする青年が可愛い(『琴のそら音』/夏目漱石)。日本人とは違う色街の風景描写、けれど日本的情緒漂う(『きみ子』/ラフカディオ・ハーン)繊細さと美しさが心に迫る。(『熊手と提灯』ほか三編/正岡子規)随筆ではなく写生文と呼ぶのだそう。その時に見えたもの、その時の心、今まさにそこにいるような臨場感。この感性がぎゅっと凝縮されたものが、子規の俳句なのだ。2018/11/06

えみ

56
ぼんやりとした灯りが仄暗い景色を映せば、一方では人の心に灯る優しい光。暗闇のなかでは愛おしいその灯りは明るさのなかでは消えてしまう。目の前が暗くなるような迷いを持つとき、そっと照らしてくれるような物語。3人の作者が書いた6篇の短編を収録した『灯』。百年文庫シリーズ第31弾。不穏と不安が入り混じる情景が目に浮かぶ、夏目漱石の『琴のそら音』。深い芸者の愛に温かな気持ちになる、ラフカディオ・ハーンの『きみ子』。機敏な感情を切り取った、正岡子規作品4篇。文章表現の素晴らしさを改めて感じることができた貴重な1冊。2023/04/09

モモ

55
夏目漱石『琴のそら音』未来の妻の具合が悪い。妻の婆やが新居が鬼門のせいだと心配するも、私は気にかけずにいた。だが頭が良い津田君にまで心配されて、いよいよ不安になる私。待ち受ける結末が灯りのよう。ラフカディオ・ハーン『きみ子』芸者の話。なぜ幸せになってはいけないのか。正岡子規『飯待つ間』『病』『熊手と提灯』『ラムプの影』病は今のコロナで上陸できなかった船を思い出させる。熊手と提灯の描写が幻想的で美しい。自分が福の神になったつもりで、誰に福を与えるか考えるのは楽しそう。どの作品も子規自身の病を感じさせる。2021/01/17

壱萬弐仟縁

48
漱石「琴のそら音」。働いておらぬ貧民は、貧民たる本性を遺失して生きたものとは認められぬ(33頁)。YouTubeも同様か。まだ趣味の段階にすぎぬ。インフルエンザ、今もコロナ拡大前にA型になり、タミフルで非常に効いて驚かされた口。ハーン「きみ子」。君子はちいさい時から、折り目正しく、きちょうめんに育てられた(83頁)。子規「飯待つ間」で猫をいじめてはいけない(106頁)。「病」で、虚子や碧梧桐が来る、と結ばれる(117頁)。病床にあって来客は苦しい。2021/05/30

森の三時

46
明治を生きた漱石、ハーン(八雲)、子規の作品。明治は今よりも夜は暗かった。明治は今よりもインフルエンザや結核などの病気が恐ろしく死がもっと身近にあった。明治の人と現代の日本人とを比べると、「灯り」が「蛍光灯」になるくらい、やはり人も変化してしまったんだと思います。けれど、私は、作品を読みながら、変わっていないところを探しているのだと思います。100年文庫を読むって変わらぬ美意識を受け継ごうとするようなものなんだと改めて思いました。今回は、ハーンの「きみ子」が特に印象に残りました。2020/02/07

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