百年文庫

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  • サイズ B6判/ページ数 165p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591119051
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

いまや高名な政治家となった学友ウォーレス。だが、彼の心はこの世ならぬものに奪われていた。少年の日の奇妙な記憶が人生を飲みこんでいくH・G・ウェルズの『塀についたドア』。不安と陶酔に縁どられた禁断の恋、痛切なラストが胸に迫るシュニッツラーの『わかれ』。世間から孤絶して暮らす裕福な美青年が独自の感覚世界に没入していく『第六七二夜の物語』(ホーフマンスタール)。現実の壁を跨ぎ越えようと、遙かな願望へ向かった人間たちの悲しくも夢幻的な物語。

著者等紹介

ウェルズ,H.G.[ウェルズ,H.G.][Wells,H.G.]
1866‐1946。イギリスの小説家、文明批評家。ロンドンの科学師範学校に学び、理科教師、ジャーナリストを経験。科学知識に基づいた『タイム・マシン』をはじめ、『モロー博士の島』『透明人間』『宇宙戦争』など古典的SFの傑作を残した

シュニッツラー[シュニッツラー][Schnitzler,Arthur]
1862‐1931。オーストリアの小説家、劇作家。ウィーンの裕福なユダヤ系医師の家に生まれ、医師から文学に転向。世紀末のウィーンを舞台に、『輪舞』『夢小説』『恋愛三昧』など退廃的雰囲気の漂う作品を書いた

ホーフマンスタール[ホーフマンスタール][Hofmannsthal,Hugo von]
1874‐1929。オーストリアの詩人、作家、劇作家。早熟の天才で、16歳で文学界に登場。シュニッツラーとともに世紀末ウィーン文壇の中心的存在となり、リヒャルト・シュトラウスと共作したオペラ『ばらの騎士』でも知られる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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mocha

88
■ᕼ.G.ウェルズ(英)『塀についたドア』現実逃避にさそう入口。そのドアの先にあるものは…■シュニッツラー(オーストリア)『わかれ』人妻との恋に身を焦がす男。その狂おしい思いが鬼気迫る。■ホーフマンスタール(オーストリア)『第六七二夜の物語』何不自由なく暮らす美青年。何が彼を追い詰めたのか。■どの作品も濃密な心理描写が読んでいて苦しいほど。明治生まれの名だたる文学者達による訳は、その古めかしさがかえって作品の時代的な雰囲気を伝えてくれる。自制心という〈鍵〉をめぐる3篇。2019/09/12

えみ

65
一枚扉を隔てた向こうの世界。そこに足を踏み入れるための鍵。その鍵はあなたをどこへ導いていくのか…。まるで胡蝶の夢。きっとこれは誰も知らない怪奇譚。夢うつつ、彼らはどこに?そして戻って来られるのか?戻りたいのか?怪しい世界への入り口に立たされる3篇の短編を収録した『鍵』。百年文庫シリーズ第23弾。それは開けてはいけない記憶の扉、H・G・ウェルズの『塀についたドア』。迷走の果てに禁断の恋を終わらせた、シュニッツラー『わかれ』。妄幻想に陥った青年の運命を描いた、ホーフマンスタールの『第六七二夜の物語』。夢現狂。2023/02/16

モモ

45
H・G・ウェルズ『塀についたドア』ある高名な政治家が見た塀の中のもう一つの世界。女性が本を開くと、過去の世界が生きて広がっている様子が怖くもあり新鮮。最後はきっとその世界に行ったのだと思いたい。シュニッツラー『わかれ』男は夫のいるアンナと恋に落ちる。会えない時間がもどかしく、アンナを知らなかった時の自分には戻れない様子が切々と描かれる。そして男のアンナへの恋心が終わった瞬間の描写が見事。現実的。ホーフマンスタール『第六七二夜の物語』少し尾崎翠『第七官界彷徨』を思い出す。好みの描写。他の作品も読んでみたい。2022/09/18

19
鍵そのものではなく、彼方と此方の境界を越えるための手段としての隠喩である鍵をテーマにした三篇。不倫相手である恋人が突然脳チブスで死ぬ、シュニッツラーの「わかれ」死んだ妻の手を取る夫を前にして、何も言えず何もできず、ただその様を見ていた男が「鍵」を手に取ることはなかった。前半の煩悶や懊悩はいったいなんだったのかというくらいに、さっと醒めてく男にウワア…って感じ。2019/04/14

ソングライン

17
幼き日に出会った異界への扉、人生の節目で現れるその扉は何を意味するのか、ミステリー風のウェルズの「塀についたドア」、美しい夫人との逢引がかなわなくなったのは、彼女の重病のためだった、あれほど恋焦がれた彼女の死に顔を見た時の冷めていく思いが痛い「わかれ」を含む3編の短編集です。2019/01/17

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