百年文庫

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  • サイズ B6判/ページ数 184p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591119044
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

不器用で手にするものは何でも駄目にしてしまう兄。家族から冷ややかな目でみられる彼を弟の「私」も馬鹿にしていたのだが…。雪の夜の悲劇が「私」の胸に刻んだ愛のかたち(ギャスケル『異父兄弟』)。荒涼とした海辺の寒村に流れついた流刑者たちの人生が交錯するパヴェーゼの『流刑地』。維新期に数奇な運命をたどった三兄弟の顛末記(中山義秀『碑』)。居場所を失った人間はどこへ向かうのか―過酷な境遇を生き抜いた人々が、人生の最果てに見た景色。

著者等紹介

ギャスケル[ギャスケル][Gaskell,Elizabeth]
1810‐1865。イギリスの女性作家。1歳で母を亡くし、伯母に引き取られる。1832年に牧師と結婚、堅実な家庭を築くが、息子の死をきっかけに執筆を開始。ディケンズ、サッカレーなどとも交流した

パヴェーゼ[パヴェーゼ][Pavese,Cesare]
1908‐1950。イタリアの詩人、作家。アメリカ文学から影響を受け、翻訳も手がける。反ファシズム活動で1935年に逮捕された後、40年代に作家としての地位を確立

中山義秀[ナカヤマギシュウ]
1900‐1969。福島県生まれ。早稲田大学時代に横光利一らと同人誌「塔」を創刊。その後、三重や千葉で教師をしながら創作に励み、1938年『厚物咲』で芥川賞を受賞。戦後は主に時代小説で活躍した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

115
追い詰められた人間の生き様を描く3篇。どの短編も凝縮された内容を持ち、優れた長編を3冊読んだ満足感を与えてくれる。特に中山義秀の「碑」が素晴らしく、目まぐるしく移り変わる幕末から明治の社会を、下級武士の兄弟の生き方を通して描く作品。坂本龍馬のような英雄ではなく、普通の武士が社会の変転に翻弄されながら、四苦八苦して生き抜く姿は胸を打った。憎しみ合ったり、支え合ったりした兄弟の兄が弟が死んだときに涙は、その時代を精一杯生きた名もなき人々の悲哀を象徴しているのだろう。2015/10/04

えみ

60
残酷な仕打ち、悲惨な境遇、壮絶な人生。それぞれが歩んだ常人では耐えられそうにない絶望の道。他にどんな選択肢があったのか考えても最良な答えは出てこない。冷たく暗い道の涯…。なぜこうなった?どうしてそうなった?を繰り返す運命。本音が閉じ込められた3篇の短編を収録した『涯』。百年文庫シリーズ第22弾。泣いた、とにかく泣いた、ギャスケルの『異父兄弟』。流刑者の交錯する惑いが描かれた、パヴェ―ゼの『流刑地』。激し過ぎる気性が三兄弟の人生を決定づけた、中山義秀の『碑』。自分に関して無口を貫く男たちの想いに感嘆の一冊。2023/02/05

モモ

51
ギャスケル『異母兄弟』母が亡くなり、継父に嫌われ辛い日々を過ごしていた兄のグレゴリー。弟の危機を救うも…。グレゴリーの愛に、みな敬意をもってひれ伏す。父の懺悔に救われる思いがする。パヴェーゼ『流刑地』故郷から遠く離れたイタリア南部の海辺の寒村に流された流刑者たち。愛する妻のため罪をおかしたが、妻はつれない返事しかなく、やがてまた悲劇がおそう…。中山義秀『碑』斑石高範・茂次郎・平太の三兄弟の一生。変わりゆく維新時代を生きた三兄弟。数々の試練が三兄弟をおそう。極限状態におかれた人間をえがいた重厚な一冊でした。2022/08/14

22
しんどい人生をどうにかやりすごし、その果てを描いた3編。中山義秀の「碑」がよかった。幕末、攘夷と佐幕に分かれ争うある藩で、父のない三兄弟が仇同士となり、山間の村で道場を開き、貧しいながらも生きる弟と金貸しとなった兄とが再会し、形ばかりの和解をする。数えきれないほど人を斬ってきた弟が業病の人々が暮らせるよう小屋を作ったり、疲れ果てた旅人を泊めてやり、峠まで見送って小さくなっていくのをちょんと石に腰かけて見守るシーンがとてもよかった。藩の内部で二つに分かれ、殺しあったのは何も水戸藩だけじゃないんだよなあ…。2019/03/24

マッキー

13
ギャスケルの『異父兄弟』、読んでる冒頭からちょっと結末は想像できてしまったけどひっそりとした悲しさが残る物語だった。2016/03/20

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