百年文庫

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  • サイズ B6判/ページ数 155p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591118931
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

檻のなかで半眼を開き、飲まず食わずで座りつづける。そんな断食芸が喜ばれた時代は去り、誇り高き芸人は苦悩する(カフカ『断食芸人』)。完全なる静寂、闇に微かに震える翼―北方で国境警備にあたる日本兵が塹壕の覗き穴からみた巨大な生命のうねり(長谷川四郎『鶴』)。地下室でパンを焼く男たちに笑いかけるターニャ。彼女の存在は疲れた男たちの希望だったのだが…。(ゴーリキイ『二十六人とひとり』)。踏みつけられた者たちの、胸に迫る人間ドラマ。

著者等紹介

カフカ[カフカ][Kafka,Franz]
1883‐1924。プラハ生まれのユダヤ系ドイツ作家。労働者災害保険局に勤務しながら小説を書き、ウィーン郊外のサナトリウムで没した。生前には短篇集数点しか刊行されず、『審判』『失踪者』『城』などの長篇は、没後に友人の手で出版された

長谷川四郎[ハセガワシロウ]
1909‐1987。北海道函館市生まれ。法政大学独文科卒業後、満鉄に入社。その後、陸軍に召集され、戦後シベリアに抑留された。帰国後、抑留体験を元にした『シベリヤ物語』を発表。翻訳でも多くの作品を残した

ゴーリキイ[ゴーリキイ][Gorky,Maksim]
1868‐1936。ロシアの小説家。社会主義リアリズムの創始者。11歳で孤児となり、職を転々とした後、24歳で短篇『マカール・チュドラ』を発表。レーニンと親交を深め、革命運動の支援もした。代表作『どん底』はプロレタリア文学の最高峰とされる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

112
カフカの「断食芸人」、長谷川四郎の「鶴」、ゴーリキイの「二十六人とひとり」を収録。どの短編も面白かったが、特に「鶴」は目の覚めるような傑作。第二次世界大戦末期の前線の極限状態を描きながら、戦争の悲惨さ、無意味さを鮮やかに浮かび上がらせる。文学の力で現実を変容させるラストは圧巻。物語の中に出てくる白い鶴のイメージは読者の脳裏に深く刻まれると思う。2014/06/07

藤月はな(灯れ松明の火)

88
「断食芸人」は既読。「鶴」は『タタール人の砂漠』を何故か、彷彿とさせた。軍の方針などに馴染めないが職務に従う吉野。矢野という気のおけない友もいながらどんどん、悪化していく戦況に不安を覚え、見えない敵に警戒し、国境を守っていた。そんな彼が出逢った鶴。あの時、矢野と一緒に行っていれば、鶴から得た直感を信じて行動していれば、変わったのだろうか。吉野が見た光景は余りにも美しく、だからこその現実は悲しい。「二十六人とひとり」は尊厳もなく、こき使われる囚われ人。そんな彼らは一人の少女に希望を見出すが・・・。2018/08/11

えみ

67
覗き込めばどこまでも堕ちていってしまうような暗闇、そんな光景を投影した3篇の短編を収録した『穴』。百年文庫シリーズ第11弾。飲まず食わずの日々を見世物にする断食芸人の孤高の輝きがもはや暗闇の中でしか認知されなくなるほどの微光となった虚しさを描いた、カフカの『断食芸人』。塹壕の覗き穴…死の影を背負う日本兵の見た向こう側の景色が伝える生の生々しさに胸が痛む、長谷川四郎の『鶴』。地下室でパンを焼く男たちのマドンナ、希望の象徴の彼女が彼らに残した残像が哀しい、ゴーリキイの『二十六人のひとり』。穴に惹かれた一冊。2022/11/18

モモ

54
カフカ『断食芸人』断食の見世物芸人。人気は落ち、ついにサーカスの動物小屋の脇で見世物の断食を続けるが…。断食芸人の後に入った若い豹は生きる力に満ちて人々を惹きつける皮肉な展開。長谷川四郎『鶴』国境線で警備する吉野。一緒に警備していた矢野が脱走する。穴倉のような場所から外をのぞく日々に終わりが近づく。ゴーリキイ『二十六人とひとり』二十六人のパン作りの男たちにとって大事な存在だったターニャ。ターニャの高貴さを証明しようと賭けをするも…。暗い穴の底で、虐げられた人間の苦しみを感じる。読むのがしんどい一冊でした。2022/09/03

こばまり

54
取り合わせの妙で楽しむ当シリーズ。不意打ちで食らった長谷川四郎の絶望といったら。ついクセのある顔ぶれで選んでしまうが、次回は麗かな読後感の残るものを読みたい。2021/02/23

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