百年文庫

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  • サイズ B6判/ページ数 181p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591118894
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

アフリカに送り込まれた貿易会社の二人の社員。出世を夢見て交易所に寝泊りを続けるが…。辺境で「文明」を担った男たちが圧倒的な不安に崩れ落ちていく様を描いた『進歩の前哨基地』(コンラッド)。フィリピンの戦線を舞台に、戦友の心を歪めていく組織悪の根源にせまった大岡昇平の『暗号手』。残虐な欲望に身をゆだね、取り返しのつかない過ちを犯した男が清らかな愛をとりもどすまでの感動の物語(フロベール『聖ジュリアン伝』)。極限に浮かび上がる人間の裸像。

著者等紹介

コンラッド[コンラッド][Conrad,Joseph]
1857‐1924。ポーランド生まれのイギリスの小説家。20年に及ぶ船員生活を経て作家となる。航海時代の経験や異郷を題材にした作品が多く、海洋小説作家、冒険物語作家として知られる

大岡昇平[オオオカショウヘイ]
1909‐1988。東京・牛込生まれ。会社勤めをしていた35歳の時に応召、フィリピン・レイテ島で米軍の捕虜に。戦争体験を元にした『俘虜記』が出世作となる。『武蔵野夫人』『事件』などベストセラーも多い。スタンダール研究、翻訳でも多くの業績を残した

フロベール[フロベール][Flaubert,Gustave]
1821‐1880。フランスの小説家。幼少時、外科医だった父親の病院で手術室や解剖教室を遊び場としたことが、後の緻密な観察力を培ったといわれる。代表作『ボヴァリー夫人』は写実主義文学の祖とされる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

93
コンラッドの「進歩の前哨基地」は既読。再読してもこれは冷水を浴びられたような衝撃がある。現場では名ばかり管理職の2人。最初は人恋しさもあり、仲が良かった2人も祖国とは異質な地で傅かれ、世話されなくなり、自分達の優位が保証されなくなった時に暴走に陥る。生き残った彼が知った生き残るためのシンプルな真理。しかし、それは元いた世界では忌むべきものだ。だからこそ、文明からの使者が来た時、彼は死ぬしかなかったのだろう。「文明」という林檎によって死を選んでしまった彼の姿に「ひかりごけ」の船長を重ねてしまう。2018/08/09

えみ

65
徐々に追い詰められて狂っていく…そこに人間の闇を見る。出世欲にかられた貿易会社の二人が不安から疑心暗鬼に陥り、次第に闇にのまれていく哀しさが描かれた、コンラッド『進歩の前哨基地』。フィリピン戦線下でも組織での地位を優位にする為にそれ相応の振舞いに徹し、それ故に大切なものを失ってしまった虚しさ漂う、大岡昇平『暗号手』。生物の命を奪う罪と、罰の重さ、そして残虐からの解放、許されるまでの長い長い怯えを写し取った、フロベール『聖ジュリアン伝』。3つの短編集が収録されている百年文庫シリーズ第7弾。『闇』が深い一冊。2022/10/15

モモ

53
コンラッド『進歩の前哨基地』言葉が通じず、文化も違う、アフリカの未開の地。そこに置かれた同国の男性2名。仲良く過ごすも、一つの角砂糖にも事欠くようになり、むかえる破滅の時。逃げ場のない息苦しさが辛い。大岡昇平『暗号手』戦争で生き残る人、亡くなる人。大岡昇平さんの実話のようだが、大岡さんのような戦時の気持ちの持ちようが大事。フロベール『聖ジュリアン伝』祝福され生まれたが、狩りで殺生しつくした報い。両親を殺めてしまったのちに自らに課した苦行。最後は神々しい。闇の中でそっと心をのぞくような忘れられない一冊。2022/09/16

(*'ω' *)@k_s

38
県立図書~文豪の名短編を編纂した一冊。テーマは『闇』-コンラッド「進歩の前哨基地」~未開の新天地で壊れていく心、それとともに育つ心の闇、終わりは突然に-大岡昇平「暗号手」~自分の居場所を渡したくないという、どこにでもある心の闇、人の浅ましさ-フロベール「聖ジュリアン伝」~たくさん命を奪って来たジュリアン、両親も殺めてしまった心の苦悩や葛藤、そして心が清めらていく様を描いた短編~テーマが『闇』ということで、読了後はスッキリせず、心が重くなる💦2022/10/28

ポップ

34
地上に明かりが灯されて以来、人々は夜を恐れなくなった。現生人類の『闇』は各々が抱える秘密に他ならない。「進歩の前哨基地」未開の地にある交易所を2人の白人が預かった。約束の6ヶ月はとうに過ぎ、食糧は底を尽き、熱病が襲う。「暗号手」大岡昇平の実体験を踏まえた小編の戦記である。もしもの事態に備えた代用の養成は、己の地位を脅かす。最後の一文と戦争の犠牲者を悼むため、本作は書かれていた。「聖ジュリアン伝」父と母の寵愛を受け、栄光の未来を約束されたジュリアン。狩りに夢中となり、残忍な気質を諫める叫びが影を落とす。2020/12/12

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