内容説明
高学歴、弱小、群居…中国で社会現象となっている高学歴ワーキングプア集団=蟻族。高度成長の裏側で深刻化する、就職できない若者たちの実態に迫る。世界経済の矛盾のなかに取り残される「蟻族」の激増は、わが国にとっても対岸の火事ではない。
目次
1 「蟻族」誕生記(接触;第一次研究調査;研究チーム;第二次研究調査;八〇後)
2 「蟻族」のすべて(基本概念;発生原因;心理状態;性・恋愛・結婚;所得状況;職業;教育状況;インターネット;集団的行動の傾向)
3 「アリ」伝奇―「群居村」取材レポート(都市のスキマ階層に触れる;北京での奮闘;非主流の道を突き進んで;すべてはうまくいく;村から村へ;上京記;保険会社のガゼル;孤独な旅人;唐家嶺を離れる;下を向いた青春―「高学歴」貧民村調査)
著者等紹介
廉思[リエンスー]
男、1980年生まれ、北京在住。中国人民大学法学院法学理論専攻博士課程。管理学修士、法学博士。中国共産党員。現職は対外経貿大学副教授。専門は法政治学、法経済学
関根謙[セキネケン]
1951年福島県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程修了。慶應義塾大学文学部教授。2010年4月より文学部長。専門は中国現代文学、特に日中戦争期の都市の文学、現代文芸理論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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山のトンネル
8
「蟻族」すなわち「大卒低所得群居集団」たちの「下から目線」による中国現代社会論。現代の中国を知る上で読みたい1冊。初版2010/9/12023/03/10
謙信公
6
高学歴、低所得、群居という共通点を持ち、中国で社会現象となっている「蟻族」。高度成長の裏側で大学生の就職、都市と農村の二極構造、底辺に置かれた階層の安定、利潤の分配、戸籍管理、高等教育など中国社会に横たわる問題を映し出す。高等教育を受け、職業の理想も高く、都市生活への適応能力も高いが、社会の公正さに疑念を持ち、挫折感や焦燥感など精神的な問題が深刻である。「蟻族」は何年か後には中国社会発展の中堅となるべき階層であり、中国の未来に眼差しを向けることになる。「蟻族」の激増は、わが国にとっても対岸の火事ではない。2021/11/22
ぷくこ
3
「中国をはじめとするアジアの優秀でアグレッシブな若者に比べて日本の若者は」みたいな話がよく聞かれるが、中国の「一部のエリート」の陰には「それほど有名ではない大学を卒業した高学歴ワーキングプア」の若者たちがたくさんいることを指摘した著書。日本同様、「じゃあどうすべきか」の答えは簡単ではないけど、この現状は知っておくべきかと思う。2011/02/09
gokuu
3
大卒でも職がなく家賃300元の住宅密集エリアで暮らす80年代生まれの中国の若者たち。エントリー400社でも職が見つからないってすごいな。それでも「自分は能力がある」と言い切れるこの国の人たちとこの国の状況が凄い。2011/01/30
kubottar
3
日本も同じようなもんかと思いきや中国の方が遙かに酷かった。格差社会のレベルが違う2011/01/07