出版社内容情報
美女の幻影を追いポンペイの街を夢うつつに彷徨する幻想小説と、精神分析家による記念碑的な文芸批評。それらを対で読む悦楽。巻末論考=森元庸介
内容説明
古代の浮彫に描かれた美女グラディーヴァ、彼女にとり憑かれた考古学者の妄想、夢うつつの青年は女の幻影を追ってポンペイの町をひたすら彷徨する。この小説に強く触発されたフロイトは、「W・イェンゼン『グラディーヴァ』における妄想と夢」を執筆、だが精神分析家による初の記念碑的な文学論は、対象との境界すら曖昧な危険で魅惑的なものだった。
著者等紹介
イェンゼン,ヴィルヘルム[イェンゼン,ヴィルヘルム] [Jensen,Wilhelm]
1837‐1911。ドイツの詩人、小説家。キール近郊で生まれ、キール大学、ヴュルツブルク大学、ブレスラウ大学で医学、後に哲学と文学を学び、博士号を取得。作家ヴィルヘルム・ラーベとは終生親交を結んだ。小説、詩、戯曲で150以上もの作品を残し、歴史を題材としたものが多い
フロイト,ジークムント[フロイト,ジークムント] [Freud,Sigmund]
1856‐1939。オーストリアの精神医学者。精神分析学の創始者
種村季弘[タネムラスエヒロ]
1933年、東京生まれ。東京大学文学部卒業。ドイツ文学者、評論家。2004年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まりお
39
古代の浮彫の美女に心引かれた青年が、その美女の生まれ、話し方、振る舞い方などを妄想していく。どこまでも独りよがりな妄想で、こうだったら良いな、を見せつけてくれる。2017/09/17
dilettante_k
3
イェンゼン『グラディーヴァ』(原著1903年)を分析題材にとったフロイト『妄想と夢』(06/07年)、種村季弘の解説『フロイトと文芸批評』に加え、復刊に合わせ森元庸介による『白昼夢、あるいは活路』を収録。小説と分析内容を合わせて読むのは、フロイトとの答え合わせをするような楽しさがある。種村の解説は、玄人はだしの考古学者フロイトが説明を略した『グラディーヴァ』の背景から「狩る女、狩られる男」の原神話を取り出すカイヨワばりの見事な分析。森元は「怠惰」を鍵語に現代思想を取り込んだアクチュアルな論考となっている。2014/03/20