出版社内容情報
主人公達の動きは、彼らの父親達が互いに貸し借りした漢籍の中にあらかじめ書き込まれている。漱石の小説世界の肥沃さと深さを読む。
野網 摩利子[ノアミ マリコ]
国文学研究資料館助教
内容説明
登場人物たちがみな、些末で煩瑣なことがらでとりこんでいる漱石最後の小説『明暗』。けれどもそこには、主人公夫婦の父親たちが貸し借りする漢籍から、豊饒な広がりがもたらされるような小説世界の起爆装置が埋め込まれている。
目次
1 父と漢籍(痔と言葉の奥;漢籍の貸し借り)
2 詩づくりと縁結びの参考書(明詩を読む人;読書家の思いつき)
3 秋の「柳」が物語を導く(秋の「柳」の含意;呉梅村詩による誘導)
4 手にした漢籍が世界を駆動する(嵌めこまれた予言の書;しかけられた漢籍という導線)
5 漢詩文をつくる人々(古文辞に学ぶ;徂徠を継承する)
著者等紹介
野網摩利子[ノアミマリコ]
1971年、大阪府和泉市生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。現在、国文学研究資料館研究部准教授、総合研究大学院大学文化科学研究科日本文学研究専攻准教授。専攻、日本近代文学、日本近代における東西の古典の受容(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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