内容説明
ライシテとは、国家や公立学校などの公共空間における宗教に対する中立性のことである。本書は、フランス革命期から、一九〇五年の政教分離法、二〇〇四年の宗教的標章禁止法(いわゆるスカーフ禁止法)の成立を経てきたフランスの脱宗教化の道のりをたどる。ライシテ研究の第一人者による解説書。
目次
序章 フランスのライシテ―記憶と歴史のあいだ
第1章 革命と帝政―脱宗教化の第一段階
第2章 二つのフランスの争い
第3章 公立校とライックな道徳
第4章 第一段階と第二段階のあいだの脱宗教化
第5章 ライシテ協約としての政教分離
第6章 ライシテの確立
第7章 ライシテの危機と復活
著者等紹介
三浦信孝[ミウラノブタカ]
1945年生まれ。東京大学大学院仏語仏文学博士課程満期退学。中央大学文学部教授
伊達聖伸[ダテキヨノブ]
1975年生まれ。リール第三大学大学院博士課程修了(フランス国立高等研究院との共同指導、歴史学・宗教学)。東北福祉大学総合福祉学部専任講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さきん
27
フランス革命以来、徹底的に政教分離をしているという浅い理解しかしていなかったが、実際は段階毎に教育を中心にライシテ化を図っていったことがよくわかった。ライシテのみではなく、他宗教との共存が大事というフランスの考えこ そ、フランス革命時の過激さから穏健化していて大いに賛同するところである。日本は多神教と仏教が多数派であるために、政治と宗教の問題で悩むことが少ないが、他国の神経過敏なところを理解できていないことが、時々問題になってしまう。また、曖昧が故に政教分離の境界がよく議論されているとは言い難い2016/10/24
ダージリン
1
フランス革命期からに亘るライシテの歴史を辿る。 日本の私にはどうしても西欧の宗教の位置付けが良く分からないのだが、脱宗教をめぐる長い闘争の歴史がフランスの一面を形作ってきたことを感じる。不思議なのは二つの世界大戦にほとんど触れていないこと。あの大戦が影響を与えない訳がないと思うのだが・・・。 2012/04/01
四無
0
2009年刊(原著2005年第3版を基に2007年第4版の改訂部分も盛り込んだもの)。ライシテは宗教だけでなく強硬な自由思想からも分離するものと。文章自体は全体的に平易に訳されていると思うのだけどどうも頭に入ってきにくい。2015/07/16
YY
0
スカーフ法で注目を浴びたライシテの歴史をつづる。意外と複雑、かつ様々な主体がからんでいた。宗教が弱い日本ではなかなかどうして身につまされる思い、とはいかない。けれども日本でも「政教分離」は問題をはらんでいて、それについて考える良い材料となる。2011/12/22
Yosuke Saito
0
フランスにおけるライシテ研究の第一人者の手になる本。19世紀フランスについて研究する際には、多くの分野で基本文献になると思われる。2011/11/29