出版社内容情報
21世紀において心理療法はどうあるべきか。その歴史的・文化的限界を明らかにしつついまこの日常でのあるべき臨床像を探る。
内容説明
心理療法は日常性を見つめるものである。そこには誕生時の社会や人々の生活が色濃く刻まれている。当時と大きく変わってしまった現代においてその技法や概念はいまだ生きたものたりうるのか。先人たちが日常から概念・技法を紡いだ態度や努力の跡を辿り、今に通用する「臨床性」を探る。
目次
1 日常性、こころ、近代(生きる現実へのまなざし;無意識という思想の誕生;「私」はどこから来てどこへ行くのか;電子メディア社会の日常性;囲い込まれた本来性の夢と虚構)
2 有限性、身体、傷つき(可能性の果てる地平から;身体の沈黙;身体の叫び―トラウマとしての身体;日常性と臨床性)
3 物語、歴史、コスモロジー(私の歴史が生まれるとき;語りから生まれる「私」;物語を生きる;新たなコスモロジー;臨床心理学の歴史の臨床性)
著者等紹介
大山泰宏[オオヤマヤスヒロ]
放送大学大学院臨床心理学プログラム教授。1965年宮崎県生まれ。1997年京都大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。京都大学高等教育研究開発センター助教授、京都大学大学院教育学研究科准教授等を経て、現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ひろか
8
学生時代、大好きだった大山先生。こころの科学の連載をまとめたものである。もっとポップな感じを期待していたが、とても思弁的。アクチュアリティとリアリティの違いは、自分なりの臨床経験の中で、分かったが、やはりユングは合わないなと再確認した。2020/10/02
恋
2
学部で、大山泰宏先生の授業は聴いていましたが、歴史的、思想的、文化的、そして現代的背景から心理療法の奥深くに切り込んでいく論考が脳裏に焼き付いて、私自身の血肉になりました。 15年前に雑誌「こころの科学」で連載したものを大幅に加筆修正したものですが、かなり書き加えたのでしょう、現代どころか、現在の心理療法を焦点に、矛盾や限界、内実や歴史的変遷などを、かなりの深度で考えさせられます。 京都大学に居られた頃から大山先生を知ってますが、先生の授業で心理学を学び始めた私にとって、まさに生まれ変わる想いでした。2020/12/16