出版社内容情報
石器時代から現代まで人類の富を平等化させてきたものは何だったのか。歴史的データを分析し、平等化メカニズムをつきとめた意欲作。
内容説明
平等化に有効だった戦争と革命は、20世紀の現象だった。21世紀の私たちはいかにして平等化を実現するのか?石器時代から現代まで、壮大なスケールで世界各国の不平等の歴史を描き出す初めての書。
目次
序論 不平等という難題
第1部 不平等の概略史
第2部 第一の騎士―戦争
第3部 第二の騎士―革命
第4部 第三の騎士―崩壊
第5部 第四の騎士―疫病
第6部 四騎士に代わる平等化のてだて
第7部 不平等の再来と平等化の未来
補遺 不平等の限界
著者等紹介
シャイデル,ウォルター[シャイデル,ウォルター] [Scheidel,Walter]
スタンフォード大学人文科学ディカソン教授、古典・歴史学教授、人類生物学ケネディ‐グロスマン・フェロー。オーストリア生まれ。1993年ウィーン大学Ph.D.(古代史)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えちぜんや よーた
104
日本の場合、二・二六事件が発生したころに0.4から0.6ぐらいあったジニ係数が朝鮮戦争が勃発した時点で0.3ぐらいまでに下がって不平等が是正したらしい。是正した主な理由は日中戦争・太平洋戦争の国家総動員体制とGHQによる農地改革。都市では株式の配当制限・経営と資本家の分離が図られ、農村では占領軍による農地改革が断行された。だが戦後70年を経てこれらの体制や改革は不平等を生むタネや経済成長の足を引っ張る温床となっている。他の時代や国でも同じことだが、どんな手段を用いても完全に不平等をなくすことはできない。2019/10/25
ひろき@巨人の肩
95
最富裕層の所得シェアとジニ係数により人類史を俯瞰して「平等」を追究した本書。現時点での結論は「平等とはディストピアである」と理解した。歴史において、平等化は富裕層の資産圧縮を伴う暴力的衝撃によってしか達成しえていない。その代表的な衝撃とは、古代帝国の崩壊、黒死病、世界大戦(大量動員戦争)、共産主義革命であり、本書では四騎士と定義した。未来において、過去の四騎士によって世界的に平等化が起こる可能性は低い一方で、温暖化や高齢化、遺伝工学の進展など不確実性の高い動きの中で、第五の騎士の出現はありうる。2023/06/06
Willie the Wildcat
79
史実とデータに基づく検証、四騎士を否定はできない。瞬間風速で平準化されるも、結局各種”層”が再生。大戦の戦勝国と敗戦国の『所得シェア』が類似の曲線を描いている点が、それを暗喩。対照的に4番目の騎士・疫病で語られる『人口と賃金』の変遷図。理想と現実の一端を如実に描写。但し、COVID-19は、この経験則を覆す気がしてならない。IPFの限界点が、不平等の限界点?物心両面での暴力は存在し続け、平等という理想を追求せざるを得ないのが現実と推察。せめて、Reasonableな世界であって欲しいと願うのみ。2020/07/22
読書ニスタ
43
げに恐ろしい一冊。平和の時に格差が拡大し、戦争、革命、崩壊、疫病のみ、平等が実現したという事実を、膨大な資料から導き出した書。全員が富裕層になれないが、全員貧乏にはなれる。格差の臨界点を超えれば戦争によって貧乏の平等が実現する。近代科学を最大限活用して、有史以来初めて、その他の方法で平等を実現しうるかを問うた一冊なのか、はたまた、豊かになりたければ、格差を助長し搾取せよとも読める。 2020/02/11
BLACK無糖好き
26
人類史では社会が安定すると経済的不平等が拡大してきたが、不平等を大幅に是正する役割を果たしてきたのが以下4つの暴力的破壊だという。①大量動員戦争、②変革的革命、③国家の破綻、④致死的伝染病の大流行。本書では主にジニ係数と所得シェアを使用し、この4つの事例の分析を試みている。平和的手段で不平等が均される事例は極めて限定的なようだ。グローバル化が進み、富の集中はもはや国家レベルで対応できる範囲を超えている印象がある。不平等の解消に向けて、終末論に陥らずになんとかできる事を積み重ねていくしかないのだろう。2019/07/27