内容説明
“科学のほうが高尚”、“エンジニアリングは泥臭い”―一般には古くからそんなイメージがある。ロケット打上げも「成功すれば科学者の手柄、失敗すればエンジニアのミス」と評価されかねない。科学とエンジニアリングの間には、緊張関係の歴史がある一方で、対等なパートナーとして世界を発展させてきた共闘の歴史もある。本書はそうした歴史を、有名企業における研究開発や国家プロジェクトなど、多くの実例で読み解く。そして、気候変動や惑星衝突のような地球規模の問題に立ち向かうとき、何が科学者とエンジニアに求められるのかを探る。
目次
遍在する危険
エンジニアリングはロケット科学
ドクターとディルバート
どちらが先か
発明家アインシュタイン
減速バンプ
研究と開発
開発と研究
代替エネルギー
複雑系
ふたつの文化
不確実な科学とエンジニアリング
偉業と課題
エンジニアリングを表彰する
著者等紹介
ペトロスキー,ヘンリー[ペトロスキー,ヘンリー] [Petroski,Henry]
1942年生まれ。1968年、イリノイ大学で博士号。同大学やテキサス大学で教えた後、現在、デューク大学教授。専攻、土木工学および建築土木史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Miyoshi Hirotaka
26
ロケットも飛行機もエンジニアリングが先行し、新たな科学を生み出した。科学者は今あるものを研究し、エンジニアは今までなかったものを創る。ガラスの物性論が未解決でも科学者は責められないし、日常生活に支障はないが、ロケット打ち上げの失敗で責められるのはエンジニア。安全と危険を分けるのに役立つ発見や設計は科学やエンジニアリングの大きな使命。一方、新たに提案される解決策には短所やとんでもない欠陥が潜んでいる。地球を脅かすグローバルな課題に立ち向かう時、お互いの尊敬すべき能力を理解し合うことで協力はもっと容易になる。2015/05/13
iwtn_
3
他にいくつか有名な本がある著者だが、これはタイトルに惹かれて手に取った。科学者とエンジニアは前者のほうがクローズアップされ、社会的な評価も高いが、その境界はかなり曖昧。科学者のアイコンと化したアインシュタインも工学的な取り組みを多くしているとのこと。また、技術と科学は絡み合うように発展してきたことを書いている。飛行機も初期はなぜ飛ぶのか解らなかったが、その後理論もついてきたわけで。表彰されにくい分野というのもそうかもしれない。ある意味、経済的な富は得やすいから?社会性も大事だねとの話もあり共感した。2022/12/22
Nozaki Shinichiro
2
全てのエンジニアに幸あれ!という本。科学(発見)とエンジニアリング(発明・技術)では、科学→技術という順だと思われがち(かつ科学者の方が社会的地位が高い)。だが、歴史を紐解くとその順は非常に稀で、逆に、技術を理解するために科学が産まれることの方が多いと。そのため、大規模なプロジェクトではエンジニアの力こそ重要になると言っています。こんなに科学と技術の違いをちゃんと考えたこともなかったなと思いつつ、この本で言われている科学と技術の境界が自分のやりたいことやな〜と認識させられました。2018/05/04
Junc
2
再読です.科学と工学の違いについて,フォン・カルマンが述べたと言われている「科学者はいま在るものを研究し,エンジニアはいままでなかったものを創る」という言葉を発端に色々な例があげられており,科学と工学の関係について 考えることができる.宇宙開発から始まり,地球温暖化の問題等についての解決方法の模索について述べられている.100点の解答ではなくても,その時に実現可能な解答を探し出して行くことが重要となる.科学と工学の意味について考えるきっかけになると思う.2017/11/07
kazzz
2
海外では、科学者と比べて、エンジニア・技術者のポジションが低くて、軽んじられてるの?日本ではそれ程でもないと思うけどなー。ちょっとその部分の愚痴(?)が多くて辟易とするところはあるけど、エンジニアリング、エンジニアの意義や存在価値、あるべき姿なんかが述べられていて、端くれとしてはモチベーション上がりました。2015/11/15