出版社内容情報
「一九六八年の革命は勝利し続けている」とは何を意味するのか。ニューレフトの諸潮流を丹念にあとづけた批評家の主著、増補文庫化!解説 王寺賢太
すが 秀実 「スガ」は糸へんに圭[スガ ヒデミ]
著・文・その他
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
耳クソ
23
秩序を支えるフェティッシュなもの、たとえば「天皇」、「貨幣」、「芸術」、「部落民」、あるいは小さな文字の「他者」、つまり疎外の間隙を埋めるそれらの「もの」=「糞尿」性を露にする六八年革命論としての物語であり歴史書である本書は、今の私には勇気づける形でダイレクトに響く。「物語」も「歴史」もまた「もの」であるように思えたからだ。それは機動戦にとっても陣地戦にとっても戦争機械にとっても避けられない最大の「糞尿」に違いない。ゆえに本書は小説的であり、それは物語であり歴史であるものに似ていて、物語でも歴史でもない。2022/07/24
踊る猫
23
著者にとってのライフワークとも言うべき「六八革命」論が文庫化されたことをまずは祝いたい。スガ氏は個人的に論理のアクロバットで読ませる人だと思うのだけど、本書の議論は至って生真面目で当時を知らない私のような読者にもどう文学やポップカルチャー、政治や言論が動いたかを分かりやすく説明してくれている。集大成的な一冊であり、感傷的なところは何処にもない。そこが類著と比べて優れているところだと思う。スガ氏にとって「六八革命」は終わっていないのだ。ファンとしては本書の議論は無難に過ぎるとも思ったが、誠実さの現れなのか?2018/06/18
浅香山三郎
13
1968年の革命が勝利し続けてゐる、と書かれると「?」と感じてしまふが、この革命を単に政治的、理論面での闘争のみならず、文化全般に波及させて見事な腑分けを行ふ。丁度、国立歴史民俗博物館で68年革命の社会運動の面を、千葉市美術館などで68年革命の芸術運動面をテーマにした展覧会が昨年来あつたけれども、その運動なり芸術運動なりの背景と、それらの展示が必ずしも深めなかたつた「戦後民主主義批判」の問題を検討する。「華青闘告発」の意味と影響を論じた13章がとくに興味深い。 2019/06/29
またの名
13
カッコ付きでも68年学生運動は圧倒的な「勝利」だったという挑発的表現は、やっぱり逆張りっぽい。用語と固有名をバラまき読者を置いてくことに躊躇しない本文を解説がうまく要約する通り、戦後民主主義に代わるフェティシズムとして活動家らが求めた党、三島由紀夫が夢想した天皇、前衛に失望した者達が持ち上げた生活者や大衆、アングラ系が飛びついた少女、運動の自己批判から覇権を握ったマイノリティなどの対象が噴出した様を記録。著者が執心するのは、天皇と言えば賛同すると訴えた三島の孤立が反転したように今や拡がるリベラル天皇主義。2019/04/14
まさき|SNS採用に強いフリーランス
5
六八年が一つの革命であるとしたら、それはいったい何に対する革命なのか。この問いに対して、絓は端的に「リベラリズム」に対する革命、日本の文脈で言えば「戦後民主主義」に対する革命である、と答える。ここで「リベラリズム」とは、第一次世界大戦とロシア革命以来、アメリカ合衆国で採用された広義の福祉国家政策を指し、「豊かな社会」の建設を目指して社会主義国家ソ連と覇権を争った資本主義国家の戦略と位置づけられる(p.522)。2020/10/24