ちくま学芸文庫
西洋中世の男と女―聖性の呪縛の下で

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  • サイズ 文庫判/ページ数 307p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480091024
  • NDC分類 230.4
  • Cコード C0122

内容説明

中世のキリスト教会は男女関係のあるべき姿を定め、夫婦の性行為にまで厳しく介入しようとした。厳格でこっけいに見える性的禁則、二転三転する娼婦の位置づけ、聖職者自身の性の問題。そんな矛盾や悲哀をかかえた世相を克明に描くことで、当時の人々の処世の様が浮かび上がる。著者は、この中世社会における性愛の扱い方が、現在のヨーロッパ文化にも通じているとし、「西洋個人主義は、中世の人々が男と女の問題を自覚する中で生まれた」と論じる。ホーソーンの『緋文字』等の物語と、史実をつき合わせ、民衆が教会から「個人」を取り戻した過程を丁寧にひもとく。

目次

第1章 『緋文字』の世界
第2章 古代・中世の宇宙観のなかの男と女(古代人の宇宙観;ローマ人の男女関係)
第3章 聖性の形成・解体と聖職者・女性(ユダヤ教と男女関係;初期キリスト教と男女関係;聖なるものの変質)
第4章 聖なるむすびつきとしての結婚(ゲルマン人の結婚;教会に管理される結婚;贖罪規定書から)
第5章 娼婦たちと社会(娼婦の位置;娼婦と娼婦宿)
第6章 中世の男と女にとって愛とは何か(聖性の呪縛の下で;個人の誕生)

著者等紹介

阿部謹也[アベキンヤ]
1935年、東京に生まれる。1963年、一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。小樽商科大学教授、一橋大学教授、一橋大学学長、共立女子大学学長などを歴任。一橋大学名誉教授。著書多数あり。2006年9月死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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松本直哉

27
教会が贖罪規定書によって、生殖のため以外の性行為を厳しく断罪する一方で、こんな楽しいことが罪になるはずがない、とごく自然に庶民は考えており、娼婦の存在は都市の管理下にあって社会的に認知され、そこに通う聖職者もいて、独身主義は名ばかりだった(たしかに中世の艶笑譚には神父がしばしばでてくる)。そのような建前と本音のダブルスタンダードを使い分けたり、その間に引き裂かれたりしながら生きていた当時の人の中で、アベラールの恋人エロイーズが、聖なるものの呪縛に苦しみつつも肉の交わりの中の真実を求めた女性として描かれる。2020/08/09

那由田 忠

22
イエスの死後、末法到来のような感じで信者が、天国に召されるために(聖なるものを求めて)禁欲に励んだのだという。それが修道院、そしてカトリック教会に組織化されるわけだ。1215年公会議で毎年懺悔(告解)をすることが決められる。司祭が罪をしていないかを問い、罪には罰(パンと水だけで贖罪する)を与える。その贖罪規定書が6世紀から誕生した。その内容は驚くほど細かく性生活を規定した(その他もたくさんあったのだろう)。そうした紹介は面白いけれど、それと聖なるものを求めた(聖性の呪縛)という意味がわからないのですね。2017/04/16

ZEPPELIN

5
「聖」ということになっている教会が、俗である一般の男女間の規定を作る。そりゃ厄介で窮屈なことになるに決まっている。しかも男尊女卑の時代なわけで、特に女性にとって仕組みは複雑。しかし聖職者も男であり、当然ながら建前と本音が違う。いつの時代も、権力のある側に都合がいいように出来てますねぇ。また、処女性の崇拝なんてのを聞くと、男がおバカなのも古今東西で変わらないということがよく分かる。もうちょっとまとまりのある文章ならば印象も違ったのだろうけれど、あまりいい物を読んだという感触は残らず2015/01/20

編集兼発行人

5
古代から中世へ至る欧州における男女の関係に関する考察。離婚において女に優越する男が階層的な秩序の維持を性の倫理に上位させる古代ローマ。相続を睨む婚姻の条件である出産に頓着しないキリスト教の下流女性における流布。聖性への憧憬に基づき殉教者を中心にした据えた都市化。性の過剰な忌避が建前となる程に堕落しながらも世俗における性への介入や占有により権威を保とうとする教会。職人として存在する娼婦。アベラールとエロイーズとにおいて各々の聖性に対する価値観が決して交わらない悲劇。等など性を軸に「個人」の誕生を平易に詳述。2013/12/07

せお

3
再読。阿部先生の著作は高校時代に随分読みました。非常に面白いです。面白いって、ゲラゲラ笑えるとか、ハラハラするってだけじゃなかったですね。この本は構成がよくて、前半で中世ヨーロッパと現在では考え方が大いに違うことを示し、最後の章でそれでも変わらない人間の愛の本質に迫ります。結婚前に読んで良かったな。2015/12/01

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