出版社内容情報
日本はなぜ対米従属をやめられないのか。戦後の「日米非対称システム」を分析し、中国台頭・米国後退の中、政治的自立のため日本国民がいま何をすべきかを問う。
内容説明
米日の支配・従属関係の原型は、太平洋戦争の勝者と敗者との上下・優劣関係のなかで形成された。米国主導のこの「日米非対称システム」が生んだ天皇制温存、新憲法、旧・新安保条約が戦後日本にとって何を意味するかを分析。米国優位を許す弱者日本独自の理由を考察する。また冷戦後の安保条約変容を検証。中国台頭・米国後退のなか、政治的自立を欠く日本を厳しく見据える視点から、相応の軍事的負担を担いつつ民主主義を確たるものにするため、いま日本国民が何をすべきかを問う。
目次
第1章 戦後日本の母型
第2章 憲法九条と国際政治
第3章 日米非対称システムの内実
第4章 冷戦が終わって
第5章 安全保障政策と外交力
第6章 政治的「自立」への道
著者等紹介
原彬久[ハラヨシヒサ]
1939年生まれ。東京国際大学名誉教授。法学博士。プリンストン大学客員研究員(1977~78年)。専門は国際政治学、日本政治外交史。早稲田大学第一政治経済学部卒業。岸信介へのオーラル・ヒストリーの実践や安保改定の政治過程をめぐる先駆的研究で知られる。著書に『戦後政治の証言者たち』(岩波書店、日本エッセイスト・クラブ賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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coolflat
17
現在、日本は米国による包括的な支配・従属関係にある。いわゆるそれを日米安保体制、筆者は日米非対称システムと呼んでいる。この日本の無条件降伏及び米国の対日占領から生まれた非対称システムは、天皇制・日本国憲法・安保条約という三つの基層を要素として構成している。戦中、米国は天皇の神格化とこれを悪用する軍部独裁、そこからくる「日本の侵略性」と戦ってきた。これを駆逐するにはどうすればいいか。それは日本が「再び米国の驚異とならざるをことを確実にする」こと、そして日本が「世界の平和及び安全の脅威とならざる」ことだった。2022/08/15
ア
7
天皇制、日本国憲法、安保条約を基層とする日米非対称システムが今日まで生命力を保ってきた、その道程が論じられる。日本は9条をもつ限り逆説的に他国に防衛を依存せざるを得ず、日米の非対称性は改善が試みられつつも解決されぬまま冷戦終結を迎えた。冷戦終結後は安保条約の広域化と日米一体化が進み、尖閣問題は日本の米への従属をさらに推し進めた。「米との関係は維持しつつ、対等な関係へ改善していく」という筆者の保守寄りの結論へのオルタナティブとしては、「平和国家のソフトパワー外交を展開する」ぐらいしか今のところ思いつかない。2022/06/27
Masatoshi Oyu
4
対米従属脱却のためにも、憲法9条を改正し、国際的な秩序維持に責任を持つべき時が日本にも来るかもしれない。 しかし必要なのは憲法改正や自衛隊の教化だけではない。まず外交力強化が必須である。こと安全保障に関して、日本外交はアメリカに影響力を行使できていない。日米地位協定の改訂すら及び腰である。自衛隊に対して政治が如何に統制力を発揮できるかも重要である。事実上のクーデター研究が行われる等、一部の先鋭化した集団を統制できなくなればいつか来た道に逆戻りである。この二つが、対米従属脱却のための今一つのテーマである。
Studies
3
バランスが取れた定説的な解説2022/07/24
カソウスキ
1
戦後日本について、日米関係を中心とする外交面から述べた本。著者は戦後日本の基層を「天皇制」「日本国憲法」「日米安保条約」の3つに求めている。著者の主張が前面に出ており、それについては賛否両論あると思うが、議論の土台として読んでおきたい本である。2020/12/30